トラック運送業を始めるには、まず「一般貨物自動車運送事業」という制度を正しく理解することが欠かせません。
この事業は、他社の荷物を有償で運ぶ事業者に対して国が許可を与える仕組みであり、いわゆる「運送業」と呼ばれる多くの事業がここに該当します。

しかし、営業を始めるには厳格な許可基準や運行管理体制の整備が求められ、営業所・車庫・車両・資金といった各要件を満たす必要があります。また、現在は業界の健全化を目的とした「5年更新制度」の導入も検討されており、今後はより厳格な審査やコンプライアンス対応が求められる見込みです。

この記事では、一般貨物自動車運送事業の定義から許可取得条件、手続きの流れ、そして今後の更新制度までをわかりやすく解説します。これから運送業を始めたい方はもちろん、すでに許可を取得している事業者にとっても、制度変更に備えるための実践的な内容となっています。

マツダ株式会社 ドライバー募集

20万円の入社祝金制度あり

一般貨物自動車運送事業とは

 一般貨物自動車運送事業とは、国の許可を受けて他社の貨物を有償で輸送する事業を指します。いわゆる「トラック運送業」と呼ばれる業態の多くがこの区分に含まれます。事業として運送を行うには、道路運送法に基づいた明確な定義と許可制度が設けられており、個人の副業輸送や軽貨物事業とは異なる厳しい基準が求められます。

有償運送の定義と対象範囲

「有償運送」とは、荷主から運賃を受け取って貨物を運ぶ行為を指します。運送業としての事業を営むためには、運賃の受領が継続的・反復的に行われることが前提であり、たとえ名目上は無償であっても実質的に金銭授受があれば有償とみなされます。
この「有償性」が、一般貨物自動車運送事業と自家用運送を区別する大きなポイントです。

該当・非該当の具体例（自社輸送・軽貨物との違い）

• 該当するケース：他社の貨物を有償で運ぶ場合、または関連会社から運賃相当の費用を受け取る場合。
• 該当しないケース：自社製品を配送する「自家用運送」や、軽自動車による配送（これは「軽貨物運送業」に分類）など。

つまり、「どの車両で」「誰の荷物を」「どんな契約で」運ぶかが判断基準になります。

許可が必要となる理由と法的根拠

この事業は道路運送法第3条に基づき、国土交通大臣（実務は地方運輸局）が許可権限を持ちます。許可制度の目的は、交通安全・輸送品質・労働環境を守るためであり、無許可での営業（いわゆる「白トラ営業」）は罰則の対象となります。

まとめ：定義と該当範囲の理解が事業の第一歩

一般貨物自動車運送事業は、有償性と他社貨物の運搬が基本条件です。軽貨物や自家用運送とは法的に明確に区別され、事業を始めるには国の許可が必須となります。

一般貨物自動車運送事業の許可取得条件

 許可を取得するには、営業拠点の整備や運行管理体制、資金力など、複数の基準を満たす必要があります。

これらは「法令遵守が可能な企業体制を持っているか」を確認するための審査項目です。

営業所・休憩施設・車庫の基準

営業所は都市計画法や建築基準法に適合し、営業エリアと車庫が概ね20km圏内にあることが条件です。
また、ドライバーの安全確保のため、休憩・睡眠施設を併設または近接地に確保しなければなりません。
車庫については、前面道路幅が3.5m以上、車両が無理なく出入りできる面積などが求められます。

資金要件と損害賠償能力

申請時点で最低でも運転資金3か月分の自己資金を保有していることが望ましいとされます。また、万が一の事故に備えた自動車損害賠償保険（自賠責＋任意保険）の加入も必須です。

運行管理体制と法令遵守の条件

運行管理者・整備管理者を選任し、労働時間・点呼・日報などを含めた運行管理体制を整備することが求められます。
違反や事故が続くと許可の取消し・更新不可となるため、日常的なコンプライアンス体制が不可欠です。

まとめ：物的・人的・資金の三要件を満たすことが必須

営業所・車庫などの物的条件、資金力、運行管理体制の整備が、許可取得の根幹です。形式ではなく実態として基準を満たすことが審査の鍵になります。

許可取得までの流れと必要書類

申請から営業開始までは、最短でも3〜6か月を要するのが一般的です。手続きには複数の書類作成と審査が必要で、法令試験の合格も求められます。

申請から審査・許可までのプロセス

1. 申請書類の準備
2. 法令試験の受験・合格
3. 営業所・車庫の確認
4. 運輸支局による審査（標準処理期間：約3か月）
5. 許可証交付・運行開始届の提出

許可処分を受けても、運行開始届を提出するまで事業を始められない点に注意が必要です。

法令試験の概要と合格基準

法令試験は道路運送法・労働基準法・安全運転管理などから出題され、80％以上の正答率で合格とされます。事業主または常勤役員が受験対象です。

行政書士を活用した手続きサポート

手続きが煩雑なため、行政書士への依頼も一般的です。特に営業所・車庫の確認や資金要件の証明など、専門知識を要する部分を代行してもらうことで、時間とリスクを削減できます。

まとめ：計画的な準備と法令知識が成功の鍵

申請は時間と労力を要するため、早めの準備と正確な情報把握が不可欠です。専門家のサポートを活用すれば、許可取得までの工程をスムーズに進められます。

一般貨物自動車運送事業に導入予定の「5年更新制度」

近年、国土交通省ではトラック運送業界の健全化を目的に「5年更新制」の導入を検討しています。

これまで一度許可を取れば半永久的に有効でしたが、今後は5年ごとに適正性を審査する仕組みへと移行する見込みです。

更新制度が検討されている背景と目的

• 法令違反や過労運転の是正
• 不正委託・多重下請け構造の改善
• 安全管理の徹底
  これらの課題を踏まえ、更新審査によって違反事業者の排除と業界の透明化を図ることが狙いです。

従来制度との違いと審査基準の方向性

現行制度では一度許可を得れば失効しませんが、今後は5年ごとの継続審査が行われ、

• 安全運行体制
• 労働時間・運転者教育
• 財務健全性
  などがチェック対象になる見込みです。

更新制導入による事業者への影響

違反歴や報告漏れがあると更新不可の可能性もあり、コンプライアンス重視経営が必須になります。一方で、適正に運営する事業者にとっては信用向上のチャンスでもあります。

まとめ：更新制は「淘汰」ではなく「信頼強化」の仕組みへ

5年更新制は、健全な事業者を評価する仕組みです。正しい運営を継続する企業にとっては、信頼を高める新たな機会になります。

許可取得後に守るべき遵守事項と運営ポイント

許可を得た後も、日々の運行管理や法令遵守が欠かせません。

違反や事故が続くと行政処分や許可取消しにつながるため、運営段階での管理が非常に重要です。

安全管理・運行体制の構築

運行管理者が中心となり、点呼・日報・労務時間の管理を徹底することが求められます。事故防止教育や安全会議を定期的に実施し、記録を保管しておくことが審査時の評価対象になります。

車両管理・運転者教育の重要性

車両は法定点検・日常点検を欠かさず、整備不良による事故を防止します。併せて、新人ドライバー教育・事故時対応訓練などの人材育成も評価のポイントです。

法令遵守と行政報告のルール

毎年の事業報告書・運行実績報告書の提出は義務であり、虚偽や遅延があると罰則対象になります。特に更新制度導入後は、これらの報告がより厳格に管理される見通しです。

まとめ：許可後も「継続的な法令遵守」が信用を守る鍵

許可取得はスタートにすぎません。日々の管理体制を整備し、書類や実績を正確に残すことが、長期的な信頼と安全運営につながります。

持続的に選ばれる運送事業者になるための取り組み

今後の運送業界では、「安全」だけでなく「持続性」と「信頼性」が重視されます。

制度対応にとどまらず、経営の質を高める取り組みが不可欠です。

コンプライアンス経営と信頼性向上

違反を防ぐだけでなく、透明な経営姿勢を示すことで荷主・取引先からの信頼を得ることができます。第三者認証や労働安全マネジメントシステム（ISO）の取得も効果的です。

デジタル化による業務効率化

運行管理や勤怠、経費処理をクラウド化することで、作業負担を軽減し、労働時間の見える化が進みます。更新制度導入後の審査にもデータ活用は大きな強みになります。

ドライバーの定着支援と働き方改革

長時間労働の是正や休暇取得促進、キャリア形成支援を行うことで、離職率を下げ、人材確保につながります。

まとめ：制度対応＋経営改善が「選ばれる運送会社」への近道

更新制度の導入をきっかけに、法令遵守だけでなく経営全体の質を高めることが、今後の競争優位につながります。

まとめ：制度理解と体制整備が信頼される運送業の第一歩

一般貨物自動車運送事業は、法令遵守を前提に社会インフラを支える重要な産業です。

今後導入される5年更新制度を見据え、営業所・車庫・体制整備・ドライバー教育といった内部基盤をしっかり整えることが不可欠です。

制度を「負担」ではなく「信頼を高めるチャンス」と捉え、持続的な経営基盤を築くことが、選ばれる運送事業者への第一歩となるでしょう。