産業廃棄物の適正処理には、契約書、マニフェストなどの書類が必要です。
この書類は一枚ずつ辻褄が合わなければならないのですが、契約書に記載の最終処分場と、返送されてきたマニフェストに記載されている最終処分場が異なる場合があります。
最終処分場の変更が行われているのです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?そこには中間処理会社が抱える〝現実的な問題〟があります。
そこで今回は、最終処分場の変更について以下のことがわかる内容になっているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 契約書と返送されてきたマニフェスト記載の最終処分場が違う!2つの原因とは
- 中間処理会社が抱える変更の事前通知ができない理由
- 最終処分場の変更に対応する方法とは
「いつの間にか変更されていた!」という事態に対応できる方法も解説しているので、ぜひご参考ください。
最終処分場が契約書違う?産業廃棄物の差し替えのメカニズム
通常の産業廃棄物であれば収集運搬報告(B2票)と処分終了報告(D票)は90日以内で、特別管理産業廃棄物の場合はB2票とD票の返送期限は60日以内です。
そして最終処分終了報告(E票)は、180日以内に返送されていなければいけません。多くは報告期限に注意をしているかと思います。しかし、報告期限以外にもマニフェストを確認すると「契約書に記載してある最終処分場が違う…」という場合があります。
いつの間にか契約書に記載されていた最終処分場と、実際に産業廃棄物が処理された最終処分場が異なる場合、契約外の処理をしてしまったことになります。 なぜこのようなことになってしまうのでしょうか?ここからは2つのケースについて解説していきます。
中間処理業者の都合で最終処分場の変更があったケース
中間処理業者がより条件の良い最終処分場を見つけた場合に変更が起こるケースです。
中間処理業者も処理コストなど様々な理由で最終処分場を変更することがあります。
契約書記載の最終処分場とは違う処分場になった場合、通常であれば排出事業者に通知を行う必要があり、覚書などの書面を交わしておくと安心です。
しかし中間処理業者は複数の排出事業者と契約しており、中小規模の処分場でも1,000社以上と契約しています。
ひとつの会社と複数の契約を交わしていることもあり得るので、契約書の総数はその数倍にもなります。
そのため、ひとつひとつの契約書に対して覚書等の書面を交わす工数をかけられない処理業者も多く存在します。ということから〝いつの間にか切替えられている〟という事態が起こります。
最終処分場の許可変更があったケース
最終処分場が新しい処分施設を設置した際に、許可証に新しい施設住所が加わることがあります。
同じ許可自治体の中で、少し離れた場所に最終処分場を設置するケースも多く、自治体によって住所が異なる最終処分場がひとつの許可証の中に混在することも珍しくありません。
この場合は「最終処分を行った場所(名称)」の変更はありませんが、「住所」が変わります。 最終処分場の都合で住所が変更になった場合、最終処分場→中間処理→排出事業者の順で通知を行うのが理想ですが、最終処分場がそもそも住所変更の通知をしていなければ、中間処理業者も変更に気付けません。
中間処理業者が抱える変更通知ができない事情
丁寧な対応してくれる中間処理業者ももちろんいますが、なかには最終処分場の変更があったことを教えてくれない処理業者もあります。
こうなると、排出事業者自身が返送されてきたマニフェストをよく確認するしか対処法がありません。
どうして中間処理業者は、最終処分場の変更があった場合に通知してくれないのでしょうか?
そこには中間処理業者が抱える現実的な問題があります。
中間処理業者が抱える現実的な問題
前述したように、中小規模の中間処理場は複数の排出事業者と契約しており、ひとつの会社が複数の契約を交わしていることもあります。 そのため最終処分場を変更するときに、ひとつひとつの契約書に覚書などの書面を交わす工数をかけられない事情があります。
そもそも最終処分場の変更で契約書の再締結は必要なのか
「工数がかかるから」という理由で、排出事業者に最終処分場の変更を通知しないのは適切ではありません。
しかし中間処理業者が抱える現実問題を考えると、個々に対応できないのもわかります。
そもそも、最終処分場が差し替えになった場合に覚書や契約書の再締結は必要なのでしょうか?
委託者が最終処分先を指定したわけではなく、契約締結時に中間処理業者が示した場所に過ぎませんので、最終処分場所の変更に伴い、改めて契約書を再作成することまでは必要ないと考えられます。
そこで少し角度を変えて印税法でも〝重要な事項〟に最終処分場の変更が該当するかどうか検証してみましょう。
国税庁のホームページでは、「重要な事項の一覧表」を公開しています。
重要事項一覧表第1号の4文書 第2号文書で以下のように重要かどうかを判断するひとつの基準を設けています。
- 運送又は請負の内容(方法を含む。)
- 運送又は請負の期日又は期限
- 契約金額
- 取扱数量
- 単価
- 契約金額の支払方法又は支払期日
- 割戻金等の計算方法又は支払方法
- 契約期間
- 契約に付される停止条件又は解除条件
- 債務不履行の場合の損害賠償の方法
上記を見るとわかるように、最終処分場の変更は〝重要な事項〟ではないので、契約書の再締結までは不要となります。
排出事業者が最終処分場差し替えに気づく方法
ここまで解説したように、最終処分場の差し替えは排出事業者自身が気付く必要があります。
そのためには、「最終処分報告がある度に、契約書の最終処分先一覧表と比べて照らし合わせる」という方法があります。
最終処分先一覧は複数の最終処分先が記載されているので、総数で見ると20〜30社になることも珍しくありません。
しかし実際には条件の良い2〜3社を使用していることが多いので、過去数件のマニフェストを確認して、「最終処分を行った場所」に記載された最終処分場を一覧表にしていきます。
最終処分報告が来たら、作成した一覧表で確認して同じ場所が報告されていれば問題ありません。
もし違う最終処分場が記載されていた場合は、契約書を確認して記載されていれば問題ありません。
一覧表に追加して、次回以降対応できるようにしておきましょう。
過去の契約書に記載がない場合は、中間処理会社に確認します。 新しい最終処分場の場合は、最新の最終処分先一覧表をもらって差し替えるか、覚書などを交わして対応するようにしましょう。
契約の前に対策も可能
ここまでご紹介した対策を読んで、「めんどうだな…」と感じた方が多いと思います。
そのため最も良い対策として、契約前に〝必要性のある最終処分場の一覧表〟を受け取るようにする方法があります。
中間処理会社としては、前述したように保険として複数の最終処分場を候補としてストックしているので、受け取った一覧表には必要性の低い最終処分場も含まれています。 必要性のある最終処分場一覧表を受け取ることで、以下のようなメリットとデメリットが生まれ、総合的にメリットのほうが勝るのでおすすめです。
メリット | デメリット |
日常の確認対象が減る | 主要の最終処分場が何らかの事情で受け入れ不可になった場合に、 他の最終処分場を一覧表に追加しなければならない |
日常の確認作業を徹底するという点では変わりありませんが、確認対象が減ることで手間も減るので、メリットのほうが勝ります。
最終処分場の差し替えに電子マニフェストではどう対応すればいいのか
1998年12月にスタートした、産業廃棄物の電子マニフェスト制度では、ここまで紹介した最終処分場の差し替えについてどのように対応すればいいのでしょうか。
排出事業主は、産業廃棄物の処理を中間処理会社に委託する場合であっても、最終処分を行う予定先の所在地を、システム上に入力する必要があります。
契約書に記載された最終処分場と、返送されてきたマニフェストに記載されている最終処分場に変更がなければ「委託契約書記載のとおり」を選択します。
しかし差し替えがあった場合は、「当欄指定のとおり」を選択して、マニフェスト登録の際に最終処分場の情報を入力します。
電子マニフェストにおいても、契約書と返送されてきたマニフェストに記載されている最終処分場が一致していなければならないので、紙のマニフェストと同様に確認作業は必須となります。
【参照】よくあるご質問|JWNET
最終処分場の確認作業を削減するには?
とはいえ、マニフェストの枚数が多いと最終処分場の確認作業に膨大な時間がかかると思います。
そこで弊社の廃棄物総合管理システム「Wing」ではそのような手間を解消することが出来ます。
マニフェストに記載されている最終処分場が契約書に記載されている最終処分場か自動でチェックが出来る機能がついております。
また、他にも産業廃棄物マニフェストを電子データ化して運用・管理したとしても、ちょっとしたわずらわしさを感じる瞬間があるでしょう。
- 各種許可証の更新
- 各行政への問い合わせ
- CSRレポートの作成
- 契約書管理など
このような小さなストレスは、弊社の経験豊富なスタッフがサポートいたしますのでご安心ください。
弊社の廃棄物総合管理システム「Wing」は、これまで業種・業界を問わずに約1,500社の企業様でご利用いただいております。
全国規模で廃棄物の一元管理に対応が可能。
簡単なシステム操作のため、排出事業者様や廃棄物業者様からご好評いただいております。 詳細やご不明点があれば、気軽にお問い合わせください。
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まとめ
終了報告が来た時に、最終処分場所が契約書とは違う場所に変更されていた場合、排出事業者は過去に中間処理会社と締結した契約書や、マニフェストを確認するようにしましょう。
中間処理会社は有事に備えて複数の最終処分場をストックしていますが、実際によく使われるの2〜3社ということが多いので、最終処分場一覧表を作成しておき照合作業を行います。
照合できれば問題ありませんが、照合できなければ中間処理会社に問い合わせて確認したほうがいいでしょう。
差変更があった場合は、一覧表に加えておけば次回以降に対応することが可能です。
契約前に〝必要性のある最終処分場一覧表〟を受け取っておけば、この照合作業の手間が簡略化されるのでおすすめです。 返送されてきたマニフェストの確認作業を徹底し、迅速に最終処分場の変更に気づけるように対策しておくことが大切です。