前年度、「昨今の古紙市況と今後の動向予測」という記事を記載させていただきました。新型コロナウイルスもワクチン浸透による沈静化、緊急事態宣言も解除され、状況は改善方向に向かい経済も少しずつ持ち直しつつあります。古紙需要は経済の動きと密接にかかわっております。経済の回復基調にあわせて、段ボール古紙需要も堅調に推移するのでしょうか?この記事では前年度の振り返りと今後の展望を記述させていただきます。
  • 2021年度の国内外市況の概要
2020年の中国による輸入禁止影響で、2021年日本国内の古紙在庫が非常にダブつき、古紙価格に関しても、かなり低迷下するのではないかと言われておりました。しかし、コロナウイルス禍で古紙回収が伸びない一方、巣篭もり需要で増加した通販向けや、復調した工業製品向けを中心に段ボール需要が拡大しました。これを受け、需要ギャップがタイトとなり、国内古紙価格は少しづつ上昇に転じていく事となります。

国内で古紙の品薄感が強まった背景には、製紙会社による段ボール原紙の輸出が急増したことも大きな要因となっております。現在、日本の古紙の輸出先は、中国に代わり、東南アジアが受け皿となっております。中国の製紙会社が段ボールの調達網を見直し、近隣諸国である東南アジアに原料調達や加工拠点を移設している為です。東南アジア全体でもインターネット通販事業が拡大し、コロナ禍での巣篭もり需要にも後押しされる形となり、段ボールの消費が急増しています。影響を受け、日本産段ボール古紙の輸出価格は2021年の春先より上昇する形となり、製紙会社は古紙の過剰な海外流出を抑えるために、結果として国内の価格を引き上げざるを得なくなりました。
欧米の経済復調により中国、東南アジアにおける段ボール需要が拡大していることから、世界市場では古紙の需要逼迫感が強まっています。その為、古紙輸出価格は当面高値基調で推移するものと予想されます。
  • 今後の展望
2021年は一部回復が遅れている産業分野もあるものの、経済は総じて前年から回復基調で推移しており
実質GDP成長率の見通しは、昨年対比で₊2.8%の着地予想となっております。
大幅なマイナス要因となった新型コロナウイルスの感染急拡大と自動車の供給制約という2つの要因は両者ともに状況が少しづつ改善してきております。感染者数が減少し、緊急事態宣言も解除されたことで人手も戻ってきております。観光業や飲食業を中心とし、個人消費はリバウンドが働くことが予想されます。自動車の大幅減産をもたらした部品調達難問題についても解消の目途が立ち、自動車生産に関しても急速な持ち直しが発生する可能性が高いと予想されます。
段ボール需要は経済と密接に関わっていることから、経済の回復基調にあわせて、2022年度の段ボール古紙の需要も堅調に推移するものかと思われます。

この予測は、新型コロナウイルスの感染急拡大が回避され、緊急事態宣言も発出されないことを前提としております。オミクロン株については、重症化率や既存ワクチン有効性など、不明点が多い状態となっております。仮に再度感染拡大が起こってしまった場合、再度の行動制限強化に追い込まれる事態が予想されます。経済への悪影響はもちろん大きく、予測値を大きく下振れする可能性があり、感染拡大がサプライチェーンの目詰まりを引き起こせば、再び供給制約の問題が発生し生産活動の重しになる可能性がありえます。その為、現時点での古紙国内外相場の価格動向については、オミクロン株の動向次第という、先行不透明感の極めて強い状況だといえるでしょう。