金属くずとは、廃棄物処理法で分類されている20種類の産業廃棄物のうちのひとつです。また、金属くず・鉄くず(鉄スクラップ)はリサイクル率が高い産業廃棄物になります。

なかにはレアメタルを含む金属くず・鉄くずもあり、産業廃棄物処理業者だけではなく有価物として買取を行う業者も多く存在しています。

そのため金属くず・鉄くずは有価物として取り扱われることも多い産業廃棄物です。

この場合マニフェストはどうすればいいのでしょうか?

そこで今回は、産業廃棄物の金属くず・鉄くずについて以下のことがわかる内容になっています。

  • 金属くず・鉄くずの定義と違い
  • 金属くず・鉄くずのマニフェスト運用方法
  • 金属くず・鉄くずの処理方法

産業廃棄物の金属くず・鉄くずについてよく分かる内容になっているので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

産業廃棄物の金属くずと鉄くずとは?定義を解説

Construction waste in a large tank. Metal and Drywall

先に結論を言うと、金属くずのほとんどが鉄くず・鉄スクラップが占めています。 それ以外にも銅や真鍮、アルミ、ステンレスさらにはレアメタルなどが金属くずに含まれており、それらは”非鉄金属”と呼ばれています。

金属くずには構造物の建築工事で発生するものや、廃棄された自動車のスクラップ、機械、スパナやモンキーなどの手工具、金属製品を製造する工場で排出されるものなど、さまざまあります。

ここからは、そもそも金属くずとは何なのか?定義や具体例と共に、鉄くず・スクラップとの違いや分類方法を解説していきます!

金属くずは産業廃棄物の種類のひとつ

金属くずとは、廃棄物処理法で分類されている20種類の産業廃棄物のうちのひとつで、金属製の産業廃棄物の総称です。

金属くずとして判断がむずかしい鉄や非鉄のなかで「金属」として扱われるものはすべて金属くずになります。

例えば、複合素材でも構成素材の最大値として金属が占めていれば金属くずとして扱われる場合が多くあります。

また、金属くずは法律で排出する業種が決められていません。ですので、 さまざまな業種から排出されます。

鉄くず(鉄スクラップ)は発生源で判断する

鉄くずとは「鉄スクラップ」とも呼ばれていて、鉄を原料としている金属くずのことです。

鉄くず・鉄スクラップは金属くずのほとんどを占めており、鉄を原料としていれば全て『鉄くず』と分類されるのではなく、実は細かく分類されています。

大きく分けて、鉄くず・鉄スクラップの分類方法は以下の2つがあります。

  1. 発生源で分類する
  2. 鉄の種類で分類する

まず、鉄くず・鉄スクラップは発生源で下記の3種類に分類することが出来ます。

種類発生源
自家発生スクラップ鉄鋼メーカーなどが製鋼や製品加工のときに発生した鉄くず・鉄スクラップ
市中スクラップ工場発生スクラップ製造業で機械や車などを製造する際に排出された鉄くず・鉄スクラップ
老廃スクラップ建築物の解体や廃車の解体、使用済みの鉄製品などが老朽化してくず化した鉄くず・鉄スクラップ

2つめは、鉄に含まれる原料で分類する方法です。

この方法では、鉄くずの品質や用途によって、以下のように分類されます。

分類銑(せん)くず鋼(はがね)くず
種類上銑くず
並銑くず
ちゅうたん鉄銑くず
炭素鋼くず
低銅炭素くず
低りん・低硫・抵銅炭素鋼くず
合金鋼くず
雑用鋼くず

上記の鉄くずは、溶解されて再流用される他に、海外へ輸出されることもあります。

金属くず・鉄くずの産業廃棄物はマニフェストが必要?

Stack of documents placed on a business desk in a business office.

産業廃棄物のなかでも有価物として扱われることが多い金属くず・鉄くずは、収集運搬時や処理の際にマニフェストが必要なのでしょうか?

先に結論を言うと、産業廃棄物として扱うのであればマニフェストは必須です。

しかし途中で積み替える場合や、収集運搬時は産業廃棄物として扱い、買取業者に到着したら有価物として扱う場合はどうなのでしょうか? ここからは、これらのケースでマニフェストを運用方する法について解説していきます。

産業廃棄物の処理にはマニフェストの交付が必要

ご存じの通り、産業廃棄物の処理を収集運搬業者や処分業者に委託する場合はマニフェストの交付が必ず必要になります。

紙のマニフェストの場合は、A票〜E票までの7枚綴りの書類が必要で、A票は交付した日から5年間保管、その他のマニフェストは送った日、もしくは受け取った日から5年間保管しなければなりません。 しかしA票以外の各マニフェストが排出事業者の手元に戻ってくるタイミングが異なるので、最後のマニフェストであるE票を受け取った日から各マニフェストを5年間保管しておくようにします。

途中で金属くず・鉄くずを積み替える場もマニフェストは必要

産業廃棄物を中間処理施設に運ぶときに、「距離が遠い」「量が少ないので溜まってから運搬したい」などの理由から、ひとまず金属くず・鉄くずを保管することもあると思います。

産業廃棄物の収集・運搬には「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要になりますが、これには「積替保管あり」と「積替保管なし」の2種類があります。 「積替保管ありの産業廃棄物収集運搬業許可であれば、自社の保管場所などで金属くず・鉄くずを一時保管したり、別の車両に積み替えたりすることができます。

しかし、全ての業者が積替保管が出来るわけではないので、委託する業者の許可証を確認する必要があります。

有価物として金属くず・鉄くずを処理した場合は?

前述したように、金属くず・鉄くずは有価物として買取されたり、リサイクルされたりすることが多い産業廃棄物です。

価値を有し、取引により金銭的利益が生じる物

有価物とは価値を有し、取引により金銭的利益が生じる廃棄物です。 しかし、有価物として取引するものの代金よりも、輸送費のほうが高くなってしまうことがあります。

この場合は「到着時有価物」として金属くず・鉄くずを扱います。

到着時有価物とは「逆有償取引」とも呼ばれていて、金属くず・鉄くずの買取業者に引き渡されるまでは産業廃棄物として扱い、引き渡されたあとは有価物として扱う方法です。

この場合、収集運搬時は産業廃棄物として扱うのでマニフェストが必要になります。

しかし通常の産業廃棄物を処理するときに必要なマニフェストとは違い、A票・B1票・B2票のみでC票以降は不要です。

金属くず・鉄くずは貴重な資源!産業廃棄物を適切に処理する方法

産業廃棄物のなかで、金属くず・鉄くずは大きく分けてリサイクルと埋め立て処理の2つの処理方法で対応します。 ここからは、金属くず・鉄くずをリサイクルする方法と、埋め立てする処理方法について詳しく解説していきます。

リサイクル

環境省が公表している、令和2年度の産業廃棄物排出・処理状況の実績によると、全国で排出された産業廃棄物のうち全体の1.6%が金属くず・鉄くずでした。 全体の割合はそこまで多くはないものの、産業廃棄物のなかで95.8%もの再利用率を誇り、金属部分のみを取り除いて回収する「金属回収」と、不純物が多い金属を精錬する「金属精錬」によってリサイクルされます。

産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績)

金属回収

金属くず・鉄くずから、金や銀などの金属を取り出して回収するリサイクル処理のことです。

例えばパソコンのプリント基板には、金や銀が含まれており、わたしたちの身近なものにはこうしたレアメタルが含まれているものも多くあります。 産業廃棄物に限らず、一般家庭から排出される家電製品を、ホームセンターや家電量販店などで無料引き取りして金属回収業者に引き渡すケースも増えてきています。

金属精錬

不純物を多く含んでいる金属くず・鉄くずは、金属精錬によって高純度の金属を抽出することができます。 特にアルミニウムや鉄は繰り返し精錬ができるので、リサイクルに最適な金属です。

埋め立て処理

前述した金属回収と金属精錬といった処理方法に適さない金属くず・鉄くずは埋め立て処理されます。

埋め立て処理は最終処分場で行われますが、最終処分場には3つの種類があります。

  1. 遮断型最終処分場
  2. 安定型最終処分場
  3. 管理型最終処分場

金属くず・鉄くずのなかでも、自動車の粉砕物など法律で例外的に指定されているもの以外の金属くず・鉄くずは、雨水などに晒されてもほとんど変化しないので、「安定型産業廃棄物」に分類されています。

ですので、安定型最終処分場に運ばれて埋め立て処理を行いますが、前述したように金属くず・鉄くずで埋め立て処理されるのは数%程度で、最終手段としての処理方法となります。 安定型最終処分場では、金属くずの他にゴムくずやガラスくず、がれき類などと一緒に埋め立て処理されます。

金属くず・鉄くずの無許可業者に注意しましょう

産業廃棄物の収集運搬・処理には「産業廃棄物収集運搬業許可」「産業廃棄物処分業許可」が必要で、さらに自治体によっては金属くず・鉄くずを売買する際には「金属くず商許可」などが必要です。

金属くず商許可が必要な都道府県

エリア都道府県
北海道地方北海道
東北地方なし
関東地方茨木
中部地方長野・岐阜・静岡・福井
近畿地方兵庫・和歌山・大阪・奈良・滋賀
中国地方広島・岡山・島根・山口
四国地方徳島
九州地方なし

金属くず商許可は都道府県の条例に基づく許可なので、全国的な許可ではありません。

このように届出や許可が必要になるので、許可を得ていない無許可業者に委託して処理をしないように注意が必要です。

無許可業者は金属を高く買取したり、安く収集運搬をしたりすることも多く、金属くず・鉄くずの処理コストを抑えられるというメリットがある一方で、廃棄物の適正処理に大きなリスクを抱えることになります。

法律では、産業廃棄物の適正な処理は排出事業主も責任を問われるので、無許可業者が不法投棄をするなど不適正な処理をした場合は、委託した側も罰せられます。 そのため、金属くず・鉄くずの処理や買取は必ず届出や許可を得た信頼できる業者に委託するようにしましょう。

まとめ

金属くずとは金属製の産業廃棄物の総称で、鉄くず(鉄スクラップ)とは金属製の産業廃棄物のなかでも鉄製の金属くずを指します。

産業廃棄物の金属くず・鉄くず(鉄スクラップ)は、再利用率が高い廃棄物です。

ですので、主に「リサイクル処理」され、最終手段として「埋め立て処理」にまわるといった形で処理されます。

また、状態によっては有価物として買取りが可能な場合もあります。

この場合、金属くず・鉄くずを有価物として取り扱うには「金属くず商許可」や「古物商許可」が必要になる自治体があります。

自治体の条例を確認し、金属くず・鉄くずを買取してもらう場合は、届出や許可を得た業者に依頼しましょう。