建築現場で排出される木材やがれき、自動販売機横のゴミ箱いっぱいの空きカン・ペットボトルなど、わたしたちの便利で快適な暮らしには、このような廃棄物の存在を無視できません。

家庭から排出されるごみは『家庭ごみ』と呼ばれ、自治体が定期的に収集を実施します。事業活動に伴って排出されるごみは『事業系ごみ』と呼ばれ、一部を除き自治体が回収を実施していません。

また、事業系ごみの中でも、『産業廃棄物』と『一般廃棄物』の2種類に分かれます。

『一般廃棄物』については、回収は民間業者に委託されているケースが大半ですが、処分のほとんどが市町村の焼却場で行われます。

しかし、『産業廃棄物』は回収から処分までを民間業者で処理することがほとんどです。

そこで今回は、『産業廃棄物』の処理の流れについて以下のことがわかる内容になっています。

  • 産業廃棄物を処理する3つの流れとは?排出事業者・収集運搬業者・処分業者の役割
  • 産業廃棄物を適切に処理しないとどうなる?違反による罰則について

産業廃棄物の処理の流れについて、わかりやすく解説していくので最後まで読んでみてくださいね。

産業廃棄物はどのように処理されるの?処分の流れ

産業廃棄物処理の流れは、廃棄物処理法というルールに則って以下の3ステップで行われます。

  1. 排出事業者 → 分別・保管
  2. 収集運搬業者 → 産業廃棄物の回収と運搬
  3. 処理業者 → リサイクル・中間処分・最終処分

ここからは、産業廃棄物処理の流れをわかりやすく解説していきます。

排出事業者

産業廃棄物を排出する人を〝排出事業者〟と呼び、排出事業者は「事業活動に伴って生じた廃棄物(産業廃棄物)を、自らの責任で処理しなければならない」と法律で定められています。

「自らの責任で」とは、産業廃棄物を正しく分別・保管し、不法投棄など不適切な処理が行われないように適切に、そして確実に処分しましょうということです。

そのため多くの排出事業者が、排出する産業廃棄物を収集運搬、または処理できる業者に委託して処理を行います。

産業廃棄物を収集運搬及び処分する業者は、都道府県知事もしくは政令指定都市等が許可した業者のみが行うことができます。

許可を得ていない業者は産業廃棄物を取り扱うことが出来ません。

許可を得た業者に委託して産業廃棄物を処理するときに、排出事業者が行うことは以下の4つです。

  • 産業廃棄物の種類ごとに分別を行う
  • 産業廃棄物を正しく保管する
  • 委託する業者と契約書を締結する
  • 産業廃棄物管理票(マニフェスト)を発行して処理する

排出事業者は、法律で定められた方法で、排出する産業廃棄物を分別した後に保管します。

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産業廃棄物は「金属くず」や「廃プラスチック類」など全部で20種類にわけられており、そのうち「紙くず」や「繊維くず」など7種類については排出できる業種などが決まっています。 また産業廃棄物のなかには、人の健康や生活環境に悪影響を及ぼす恐れがある廃棄物もあるので、それらを「特別管理産業廃棄物」としてより特別な保管や処理の流れで処理を行います。

20種類に分類される産業廃棄物の具体例を紹介

産業廃棄物・特別管理産業廃棄物ともに、許可を受けた収集運搬業者や処分業者に引き渡す際は、「産業廃棄物管理票(以下マニフェスト)」と呼ばれる書類を発行します。

マニフェストには産業廃棄物の名称や種類、個数など、その廃棄物が何で、どのくらいあるのか、どこに運ばれるのかなど詳細なことが明記されている大事な書類です。

マニフェストは紙と電子データの2種類があり、紙マニフェストについては発行だけでなく返送されてきた分を5年間保管する必要があります。 一方で電子マニフェストの場合はデータを運用システム側が保管・運用してくれるので、保管場所を必要とせず、紛失リスクがなくなるなど多くのメリットがあるので利用する排出事業者や収集運搬業者、処分業者が増えてきています。

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収集運搬業者

産業廃棄物を処分業者まで運ぶのが〝産業廃棄物収集運搬業者〟です。

産業廃棄物の収集運搬は、排出事業者から出た産業廃棄物の性状を変えることなく処分業者まで運ぶのが仕事です。

収集運搬中に産業廃棄物が飛散・流出することなく無事に処分業者まで運搬しなければならないので、産業廃棄物の性状に応じてトラックなどの運搬車両や、運搬容器などを複数保有しておき、必要に応じて適切に使用する必要があります。 前述したように産業廃棄物の収集運搬は都道府県知事または政令指令都市等が許可した〝産業廃棄物収集運搬業許可業者〟のみが行うことができます。

産業廃棄物の運搬はどうしたらいい?3つの運搬方法と許可不要で運搬する方法とは

ただし「専ら物(もっぱらぶつ)」と呼ばれる以下の4品目は「専ら4品目」と呼ばれ、リサイクルを目的に収集運搬する際は許可不要で行えます。

  • 古紙(紙くず)
  • 古繊維(繊維くず)
  • くず鉄(古銅などを含む金属くず)
  • 空きビン類(ガラスくず)

処分業者

排出事業者から排出された産業廃棄物は、収集運搬業者に引き取られた後に処分業者まで運ばれます。 処分業者における処分方法は大きく分けて3つあり、それぞれが違う役割を担います。

処分方法役割
中間処分最終処分・リサイクルの前段階として、選別や破砕、脱水、焼却・中和を行い、廃棄物の分別や粉砕によって産業廃棄物を減量化する
再生処理再生(リサイクル)できる産業廃棄物は再び新しいものへと生まれ変わります
中間処分後に再生処理されるケースもあれば、直接、再生処理されるケースもあります
最終処分リサイクルできない産業廃棄物は、中間処理後に最終処分場に運ばれて埋め立てたりして最終的な処分が行われる

中間処分業者は、産業廃棄物をリサイクルや最終処分しやすいように、燃やす(焼却)、細かく砕いて減量化する(破砕)、汚泥や糞尿など水分の多いものから水分を取る(脱水)、より細かい種類へ分別する(選別)などを行います。

また、前述したように産業廃棄物には有害な物質を含むこともあるので、中間処分業者で必要に応じて有害物質を取り除く(無害化)、廃酸などを中和する(安定化)などを行います。

この中間処分という工程は産業廃棄物の処分の流れでとても重要な工程で、中間処分を行わずにそのまま産業廃棄物を埋め立てれば、有害な物質が土壌に流出して、人が住めない土地になってしまうこともあります。

そのため、中間処分は産業廃棄物の処分の流れでは必須で、さらに環境を保護するためにリサイクルできる廃棄物はリサイクルを行います。これを〝再生処理〟と呼びます。

意外なことに産業廃棄物はリサイクル率が高く、令和4年実績では全体の8割を再利用することができており、特にがれき類や金属くず、動物の糞尿、鉱さいは貴重な資源です。

一方で汚泥や廃アルカリ、廃酸、廃油は比較的に再生利用率が低く、産業廃棄物全体の2.3%が最終処分場で処分されます。

産業廃棄物の埋め立ての最終処分場は、以下の3つの種類があります。

  • 遮断型…有害物質を含む産業廃棄物を最終処分する
  • 安定型…有害物質を含まない産業廃棄物を最終処分する
  • 管理型…遮断型・安定型のどちらでもない複数の素材が混ざり合った廃棄物を最終処分する

国内では安定型最終処分場が1,165施設と最も多くなっています。

最終処分場は法律に基づいた構造基準の施設で、産業廃棄物も性状・特性に応じて適切に処分することができる施設です。

しかし国内には3つの最終処分場を併せて1,942施設ありますが、最終処分場の残余年数(寿命)は年々減少しています。 最終処分場の寿命は2018年時点で〝残り17.4年〟と算出されており、約20年後には産業廃棄物を埋め立てて処分できなくなる課題を抱えています。

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適切に産業廃棄物を処理しないとどうなるの?違反による罰則

冒頭でお話したように、産業廃棄物の適切な処理の流れは廃棄物処理法に基づいて実施されます。

産業廃棄物は環境や人体へ悪影響を及ぼすこともあるので、違反した際には厳しい罰則が設けられています。 ここからは、廃棄物処理法で定められた違反行為の一部を紹介していきます。

都道府県知事から許可を得ずに産業廃棄物を収集運搬・処分を行った

前述したように、産業廃棄物の収集運搬や処分には、一部産業廃棄物を除いて都道府県知事または政令指定都市の許可が必要です。

もし排出事業者が無許可業者へ収集運搬や処分を委託した場合は無許可業者だけでなく排出事業者も罰せられます。 (法第12条第5項 委託基準違反)

産業廃棄物を処分するときにマニフェストを交付しなかった

産業廃棄物を排出するとき、排出事業者は収集運搬業者・処分業者に対してマニフェストの交付が義務づけられています。

また虚偽の内容を記載してマニフェストを交付した場合も罰せられます。 (法第12条第3項第4項 排出者管理票交付義務違反・記載義務違反・虚偽記載)

産業廃棄物を不法投棄した

産業廃棄物を適切に処理することは排出事業者の義務です。

もし山中や畑などに不法投棄した場合は罰せられます。(法第16条 廃棄物の投棄禁止違反)

また、委託した業者が不法投棄した場合は不法投棄した業者だけでなく排出事業者自身も罰せられます。

(法第12条第7項 廃棄物適正処理への必要措置違反)

まとめ

産業廃棄物処分の流れは、「排出事業者が分別・保管」「収集運搬業者が処分業者まで産業廃棄物を運搬」「処分業者が産業廃棄物を適切に処分」の3つの工程で処理します。

排出事業者は、都道府県知事もしくは政令指定都市等から許可を得た収集運搬業者や処分業者を通じて産業廃棄物を適切に処分する責任を負い、違反した場合は厳しい罰則が定められています。

わたしたちの家庭から排出される一般廃棄物と比べて、事業活動に伴って排出される産業廃棄物は全体の総排出量が多いので、適切に処理を行うことがとても重要です。

適切に処分することができれば、全体の排出量を減量化し、貴重な資源はリサイクルすることが可能です。