事業活動に伴って排出される産業廃棄物の中には、わずかな量でも人体や環境に悪影響を与える物もございます。

そのため、処理方法だけではなく保管場所や保管方法についても注意が必要です

産業廃棄物の収集運搬、保管、処分では、必ず廃棄物処理法に基づいて正しい方法で処理を行う必要があります。

その中で産業廃棄物の一時保管場所の表示義務についても細かな規定や基準が設けられています。

そこで今回は、産業廃棄物の一時保管場所の表示義務について以下のことがわかる内容になっています。

  • 産業廃棄物の一時保管場所における表示義務とは?大きさや場所の基準
  • 産業廃棄物一時保管場所での表示板・看板への表示内容
  • 産業廃棄物の表示義務における注意点
  • 荷姿別に安全に産業廃棄物を一時保管するためのポイント

産業廃棄物の一時保管場所における表示義務について詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてください。

産業廃棄物の一時保管場所の表示義務とは?

産業廃棄物の運搬や保管・処理を行う時は、廃棄物に関する情報の表示義務が廃棄物処理法 によって定められています。

看板や掲示板で産業廃棄物の内容を表示することで、公衆衛生の向上や安全性を確保するためです。

企業は、産業廃棄物を一時保管する場合に、その場所に表示する義務が御座います。

ここからは、どのような場合に産業廃棄物に関する表示義務が必要なるのか、看板や掲示板の表示に関する詳細についても解説していきます

表示義務表示推奨
車両を用いて産業廃棄物を運搬医療機関などから排出される産業廃棄物を収納する容器
船舶を用いて産業廃棄物を運搬
産業廃棄物の保管場所
最終処分場

トラックに「産業廃棄物収集運搬車」と表示されているのを見かけたことがあるのではないでしょうか。

あれは、「車両を用いて産業廃棄物を運搬」に該当するため、産業廃棄物の表示義務を守っているということになります。

表示義務に該当する上記の表4つについては同じ内容を表示すればいいというわけではなく、それぞれの運搬方法や保管・処理方法に応じて表示方法が異なります。

例えば、先ほど例にあげた車両を用いた産業廃棄物の運搬では、「産業廃棄物収集運搬車」の記載、事業者名や許可番号を記載する必要がある他に、文字の大きさまで規定があります。

では、産業廃棄物を一時保管している場所ではどのような表示をすればいいのでしょうか?

一時保管場所に表示する掲示板・掲示板の大きさ

産業廃棄物の一時保管場所の場合は、横・縦共に60cm以上の掲示板、あるいは看板で「産業廃棄物保管場所」の表示をする必要があります。

上記は産業廃棄物の保管場所掲示板・看板の一例で、後述しますが必ず明記しなければならない表示内容があります。

また、産業廃棄物の保管場所である旨の表示をする際は、廃棄物処理法で定められている基準に従って掲示板や看板を設置する必要があります。

掲示板・看板を設置する場所と規定

産業廃棄物を一時保管する建物の構造については明確な定義が存在していませんが、「保管基準」というものが廃棄物処理法で定められています。

まず、産業廃棄物の一時保管には“囲い”が必要になります。

廃棄物の荷重が囲いに直接かかる場合は、その荷重に対して耐力上安全な構造である必要がありますし、容器に入れずに産業廃棄物を保管する場合は以下のような基準が存在します。

  • 囲いの下端を起算として勾配が50%以下とでなければならない
  • 内側2mは囲いの高さより50cmの基準線以下、それより内側は勾配50%以下 ※廃棄物が囲いに接する場合

他には、産業廃棄物が悪臭の発散や飛散・流出・地下浸水を起こさないように、産業廃棄物の一時保管場所では地下水や公共水域への流出を防ぐ排水口の設置や、底面を不浸透性の材料で覆うことがあげられます。

害獣や害虫の発生対策はもちろんのこと、日常的な清掃を欠かさず行い、必要に応じて定期的に専門業者へ依頼しての清掃も必要になるでしょう。

最後に石綿含有産業廃棄物や、水銀使用製品産業廃棄物を保管する場合は、他の産業廃棄物と混同しないように、梱包や仕切りを設置して完全に分ける必要があります。

産業廃棄物の一時保管場所に設置する看板の表示内容

前述したような、産業廃棄物の一時保管場所には廃棄物処理法で定められた表示義務を守る必要があります。

では、掲示板や看板にはどのようなことを明記すればいいのでしょうか。

ここからは産業廃棄物の掲示板や看板に明記する表示内容について詳しく解説していきます。

1.産業廃棄物(または特別管理産業廃棄物)の保管施設であること

一時保管場所に設置する掲示板や看板の一番はじめに、「この場所は産業廃棄物の保管場所です」ということがひと目でわかるよう表示をしましょう。

2.産業廃棄物(または特別管理産業廃棄物)の内容・種類

産業廃棄物の種類について明記します。

産業廃棄物は20種類に分類されており、燃えがらや汚泥、廃油、廃酸などがあります。

以下の記事では産業廃棄物の種類と具体例を一覧表にして解説しているので、分からない場合はぜひ参考にしてみてください。

「20種類に分類される産業廃棄物の具体例を紹介」

3.数量(積替や処分のための保管である場所)

こちらは積替や処分のための保管の際に必要になる表示内容です。

オフィスビル内で、業者が収集に来るまで数日間一時保管しておく場所での表示は不要です。

4.管理人の氏名や名称・連絡先

産業廃棄物を一時保管している場所を管理しているのが個人の場合は、個人の氏名を明記します。

法人の場合は法人名を明記することもできますが、管理責任の所在を明確に示しておいたほうが、トラブルが起こった際に連絡が取りやすくなるので、法人名を明記する場合は部署名まで明記したほうがいいでしょう。

また、担当者が変わることがあれば、マグネット式などのシールで貼り付けてもかまいません。

また、連絡先には内線番号だけが記載されていることがありますが、緊急時に携帯電話やスマートフォンですぐに連絡が取れるように、外線番号も明記するようにしましょう。

5.最大保管高さ(屋外で容器を用いない保管の際は必須項目)

こちらは屋外で容器を用いずに産業廃棄物を保管している際に必要な項目です。

明記する際は、想定される「最大保管高さ」を記載するようにしましょう。

産業廃棄物の表示義務における注意点

産業廃棄物の一時保管場所に、掲示板や看板を設置しておけば法律を守れているとは一概に言い切れません。

掲示板や看板の大きさは、前述したように縦・横共に60cm以上の大きさなので、この基準を満たさない大きさの掲示板や看板は無効と判断される可能性があります。

また、表示内容を明記する文字の大きさには基準や規定が定められていませんが、遠くからでもはっきりと認識できる大きさの文字のほうがいいでしょう。

【参照】産廃知識 産業廃棄物の運搬・保管等の表示|公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター

【参照】産廃知識 保管基準|公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター

荷姿別に産業廃棄物を安全に一時保管するために

石灰や穀物、土砂、木チップなどは、容器に入れずに「バラもの」として一時保管される産業廃棄物ですが、廃棄物の種類によってはフレコンバッグやドラム缶で保管することもあります。

ここからは、荷姿別に安全に産業廃棄物を保管するためのポイントを解説していきます。

フレコンバッグで産業廃棄物を保管する場合

大きな土のうのような形状をしているフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)で、産業廃棄物を一時保管する場合は以下の点をまず確認しましょう。

  • ロープやベルト部分に破損がないか
  • 水漏れがないか
  • 先に尖った産業廃棄物によって袋が破けていないか

フレコンバッグの破損は思わぬ落下事故を引き起こすこともある他に、袋の劣化や破れは産業廃棄物の流出と漏洩につながります。

また、フレコンバッグは紫外線によって劣化してしまうので、屋外で産業廃棄物を保管していて、複数回フレコンバッグを使用している場合は劣化確認が必須です。

フレコンバッグに詰める産業廃棄物によっても対応が異なります。

例えば水分の含有量が高い汚泥などをフレコンバッグに詰める場合は、水分の外部漏れに注意が必要です。

場所によっては防水性の高いフレコンバッグに入れて、水分が漏れないようにしましょう。

最後に、コンクリートくずや金属くずなど先の尖った産業廃棄物をフレコンバッグに入れて一時汚保管する場合は、フレコンバッグが破れやすくなります。

そのため、パレットの上に置くなどして運搬時のフレコンバッグの破れに気をつけましょう。

ドラム缶で産業廃棄物を保管する場合

一時保管であればそこまで問題ありませんが、屋外で長期保管する場合にドラム缶の腐食や破損・傷による産業廃棄物の漏洩に気をつけましょう。

また、溶材系や廃油などの有機性廃溶液の場合、低沸点なのでガスが発生しやすい液体を満たした場合は夏場の高温によってドラム缶が膨張してしまい、キャップが外れて可燃性ガスが噴き出す可能性もあります。

このような事故を防ぐためには、産業廃棄物の性質をよく把握しておき、ドラム缶のガス抜きや、気密性の高いクローズドドラムを使っていないか、また保管場所に注意を払うようにしましょう。

まとめ

産業廃棄物の収集運搬や保管・処分の際には、そのことを行っている旨の表示義務がありますが、それぞれの工程で表示内容が異なります。

特に産業廃棄物の一時保管場所の場合は、細かな基準が設けられているのですべて守る必要があります。

表示する看板や掲示板の大きさに気をつけて、文字も見やすいように工夫する必要がある他に、産業廃棄物を保管している環境も確認が必要です。

また産業廃棄物ごとに性質を把握しておくことで、万が一の事態を防ぐことができます。