私たちの身の周りにある、段ボールやその他の紙類。これらは製紙原料となる貴重な資源であり、リサイクルを通じて循環型社会の形成に必要不可欠な要素を担っています。リサイクルとは「廃棄物を原料や燃料として、再び利用すること」です。この記事を通じて古紙の状況を知っていただけたらと思います。
古紙市況について(2018~2021)
2018年以降、米中による貿易戦争の反動があり、さらには2020年の中国による古紙の全面輸入禁止の影響を受け、古紙の需給にだぶつきが生じました。日本の古紙輸出先は7割~8割が中国向けでしたので閉鎖的な動きを受けてしまうと大きな影響を受けます。様々な動きを受け、2019年初頭から、古紙の輸出価格はリーマンショック時並みの暴落に見舞われ、古紙価格は長期の低迷状態を余儀なくされました。2020年春以降は、コロナ禍による古紙の発生量減少と東南アジア向け輸出の拡大により、余剰在庫が徐々に減少し、 小幅に揉み合いながらの横ばい状況で推移しているというのが現状です。
今後の古紙業界における課題
国内の古紙市況につきましては、コロナウイルス禍での巣ごもり需要による通信販売向けや自動車などの機械製品向けを中心に、製品段ボールの需要は堅調に伸びております。併せて古紙段ボールにつきましても、旺盛的な需要が続いております。しかしながら、雑誌と新聞に関しては、オフィスワークの在宅化や新聞折り込みの減少等の影響で、需要、供給共に大幅な減少傾向を余儀なくされております。 国内における製紙会社は将来的な国内市場の縮小を予見し、海外への製品販売に注力している形となっております。ターゲットとしては、主に東南アジア・中国方面です。 東南アジア・中国方面では、経済復調を背景に、段ボールの需要が急激に伸びております。国内生産だけでは供給が間に合わなくなっており、不足分の原料を輸入で調達するといった構図が定着しているからです。国内の大手製紙会社も海外に生産拠点を建設し、現地生産へ積極的に乗り出してきております。 国内の古紙問屋は直近2年の輸出価格低迷の経験から、リスク回避の為、国内向け販売へ軸足をシフトしており、経営の安定化の観点からも、今後はこの乖離現象の是正が喫緊の課題となってくるものと予想されます。
各国の経済情勢を踏まえた古紙市況
中国経済の急激な経済V字回復とアメリカの大規模な財政出動による経済復調に牽引される形で、世界経済は徐々に回復の兆しを見せつつあります。しかしながら、ヨーロッパは依然としてパンデミック前より生産レベルが低い状態が数年続くとみられております。日本は少なくとも2021年中はコロナウイルスの感染拡大が継続すると仮定した中で、一定の経済活動の抑制を余儀なくされるものと予想されます。上記の情勢を背景に、今後も中国・東南アジア主導の古紙需要は堅調に続くものと思われます。 楽観的な思惑が先行する先物取引的な相場価格は、現在調整局面に入りつつあり、乱高下を伴う先行きの不透明な状況が、しばらくは続くものと思われます。
動向予測
今後の国内動向につきましては、製紙会社は国内市場に飽和感がある為、今後も海外市場に活路を求めていくと予想されます。不透明な海外需要に依存するリスクを考慮すると、海外重視というよりも、国内市場との稼働益のバランスを見ながらの両面運営となるだろうと思われます。 また、国際市場につきましては、インドで新型コロナの感染が拡大し、古紙需要が減退している影響で、インドに流入していた欧米からの古紙が東南アジアに向かい始めております。今後、東南アジアでのシェアを巡って日本、中国、アメリカ、欧州による古紙争奪戦が始まるかもしれません。
項目
・過去の古紙状況
・国内の古紙市況
・各国の古紙市況
・今後の動向
昨今、コロナウイルスが猛威を振るっている中で、様々な企業が企業価値の最適解を求め事業を継続する努力を行っております。今回色々な立場と観点より、この記事を挙げてさせていただきました。閲覧していただいた読者の皆様が少しでも興味を持っていただければ嬉しく思います。