産業廃棄物処理法では、廃棄物を排出する事に対して”排出事業者”は誰に当たるのか明記されていません。

そのため、だれが排出事業者に該当するのかわからない方が多いと思います。

会社であるのか特定の個人なのか、誰が排出事業者に該当するのか確認しておくことが大切となります。

また、排出事業者は3つの義務を負うのでしっかりと確認しておきましょう。

そこで今回は、産業廃棄物の排出事業者が負う義務について以下のことがわかる内容になっています。

  • 会社?個人?産業廃棄物の排出事業者とはだれのこと?法律上の定義とは
  • 排出事業者が負う3つの義務
  • ルール違反の厳しい罰則

産業廃棄物の排出事業者とはだれのこと?定義について

産業廃棄物を排出する事業者のことを〝排出事業者〟と呼びます。

排出異業者は、産業廃棄物の管理や処理に対して責任を負う立場の人物ですが、だれのことなのか法律上明確に定義されていません。

参考になるのが、産業廃棄物に関する法律である廃棄物処理法の第3条第1項で定められています。

事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

この一文から、〝事業活動に伴って廃棄物を排出した者〟が産業廃棄物の排出事業者として実質的に定義されているのがわかります。

では、排出事業者はどのような責任を負うのでしょうか?

次の項目で詳しく紹介していきます。

産業廃棄物の排出事業者が負う3つの責任とは?

排出事業者とは、事業活動に伴って廃棄物を排出する者のことだと先ほど解説しました。

例えば、会社の代表者などがよくある例です。

排出事業者は自らの責任で産業廃棄物を適正に処理をしなければならないという義務を負いますが、その義務は3つあります。

ここからは、排出事業者が負う3つの義務について紹介していきます。

適正処理の義務

産業廃棄物は廃棄物処理法で定められた19種類と政令第13号廃棄物と呼ばれる1〜19に該当しない産業廃棄物、合計20種類に分類されます。

燃えがらや汚泥、廃油、廃酸などが代表的で、20 種類の中には、事業活動の内容によっては産業廃棄物に該当しないものもあります。

例えば、建設業に係わるものとして工作物の新築、改築または除去に伴って生じた紙くずや木くずなどは産業廃棄物に該当しますが、その他業種の場合は産業廃棄物には該当しません。

産業廃棄物に該当しない場合は、事業系一般廃棄物として処理します。

さらに、産業廃棄物のうち特に爆発性、毒性、感染性その他人の健康または生活環境に係わる被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物は、「特別管理産業廃棄物」に分類されます。

こうした産業廃棄物の性状に応じて、適切に分別し、適切に管理を行った上で処理することを〝適正処理〟と言います。

産業廃棄物の保管や処理は自社で実施することも可能ですが、都道府県の許可を得た専門業者へ委託するケースが多く、委託基準についても知っておく必要があります。

許可を得た業者への委託義務

産廃法では、以下の2つの委託基準を定めています。

  1. 許可がある業者に処理を委託しなければならない
  2. 委託契約書を締結しなければならない

上記2つについて詳しく見ていきましょう。

1つ目は、産業廃棄物の収集運搬や処理を行う専門業者への委託を行い、適正に廃棄物を処理することを指しています。

産業廃棄物の収集運搬や処理を行う専門業者は、都道府県の許可を得た業者である必要があり、無許可業者への委託は罰せられるので注意が必要です。

そのため2つ目の委託契約を締結する際には、収集運搬業者や処理業者の許可証を確認し、排出事業者が排出する廃棄物を処理できる許可なのか、正しく処理できる設備を有しているのか確認しましょう。

委託契約書締結は必ず書面で行い、さらに委託契約には〝2社契約〟が原則です。

収集運搬と処理を別の業者に委託する場合は、それぞれと直接委託契約を締結しなければなりません。

委託契約書と同じく重要な書類になるのが、産業廃棄物管理票(マニフェスト)です。

マニフェストには紙の書類としてのものと、電子データ状の2種類がありますが、どちらも法定記載事項が定められているのでしっかりと記載しましょう。

マニフェストの発行の義務

産業廃棄物管理票はマニフェストと呼ばれていて、A票、B1票、C1票、C2票、D票、E票の7枚綴りの書類です。

マニフェストは産業廃棄物を排出する事業者が発行し、収集運搬業者や処理業者との3者間で共有する書類です。

排出事業者が産業廃棄物の収集運搬業者に発行するマニフェストは「1次マニフェスト」と呼ばれ、処理業者が処分後の残さ物を最終処分場業者などに処理委託する際に交付するものを「2次マニフェスト」と呼びます。

1次マニフェストと2次マニフェストの運用方法は基本的に同じで、特に1次マニフェストは基本の鍵となる書類なのでしっかりとポイントをおえておきましょう。

特に重要なポイントが、産業廃棄物の排出事業者はマニフェストを5年間保管しなければならないことです。

マニフェストを交付した排出事業者と、それを受け取った収集運搬業者や処理業者は双方で5年間にわたりマニフェストを保管します。

マニフェストは産業廃棄物の収集運搬や処理が終了すると、排出事業者に返送されるものもあります。

そのため、最後に返送されてくるE票(最終処分終了の確認)が手元に届いた日から5年間保管するとわかりやすいのでおすすめです。

しかし、マニフェストは原則として再発行できない書類なので、万が一紛失してしまうと取り返しがつきません。

そのため最近では〝電子マニフェスト〟が普及しています。

電子マニフェストとは、1998年12月より運用が開始された電子情報化されたマニフェストのことで、従来の紙の書類ではなく、電子マニフェストシステム(JWNET)を利用して専用システム上で管理・運用することができます。

そのため電子マニフェストは紛失のリスクがなく、他に産業廃棄物の事務処理の効率化や法令順守とミスの防止、データの透明性というさまざまなメリットを得られます。

しかし収集運搬業者や処理業者も電子マニフェストを利用していなければならないので、利用の際は事前に各委託業者に確認するようにしましょう。

排出事業者の責任は重い!違反者には罰則が科せられる

近年テレビのニュースでたびたび報道されるようになった〝廃棄物処理法違反〟のニュースは、産業廃棄物を排出する排出事業者や、収集運搬業者、処理業者にとって他人事ではありません。

特に産業廃棄物の排出事業者は、適切な内容で収集運搬業者や処理業者と契約を締結していなかったり、マニフェストの交付ミスがあると懲役刑や罰金刑に課せられることも珍しくありません。

また自社に限定せず、委託していた収集運搬業者や処理業者が適切に産業廃棄物を扱っていなかった場合も排出事業者の責任になります。

この場合、注意義務違反としての措置命令が下り、委託した業者として産業廃棄物の撤去費用の負担などを請求されることもあります。

排出事業者がルールを守るのはもちろん、委託する収集運搬業者や処理業者がちゃんとルールを守って、自社が排出した産業廃棄物を取り扱っているか確認することも排出事業者の責任です。

まとめ

産業廃棄物の排出事業者とは、事業活動を伴って廃棄物を排出する法人、会社の代表者【個人事業主】などを指します。

排出事業者は、産業廃棄物を最後まで適切に処理しなければならない義務を負うので、違反すると懲役刑や罰金刑に課せられる可能性もございます。

排出事業者は、「適正処理」「委託基準を満たした許可業者への委託」「マニフェストの交付と保管」の3つの義務を負います。

このうち1つでもできていない場合は違反となるので注意が必要です。

特にマニフェストの交付や保管・運用は、5年間という長期に渡ります。

そのため近年では「電子マニフェスト」が普及しており、専用システムを利用することで紛失や記載ミスなどの大きなリスクを最小限にすることが可能です。

産業廃棄物の適正処理のためにも、ルールを守った適正処理はとても重要になるのでしっかりと確認しておきましょう。