産業廃棄物は様々な工程で適切な処分が行われますが、最終的にどのように処分されるかを知っている人はそれほど多くないのではないでしょうか。
様々な処分工程を経た産業廃棄物は最終的に『最終処分場』という処分施設で最後の処分が行われます。
「最終的に産業廃棄物はどうやって処分されるの?」
「産業廃棄物の最終処分場ってどんなところ?」
今回は、これらの疑問を含めて産業廃棄物の最終処分場について以下のことを記述しています。
- 産業廃棄物の最終処分とは
- 産業廃棄物の最終処分場の種類
- 産業廃棄物の最終処分場が抱える問題と課題
産業廃棄物や、廃棄について最終処分は重要な役割を担っています。
是非この記事を踏まえて『廃棄すること』について考えるきっかけになればと思います。
産業廃棄物の最終処分とは
産業廃棄物の最終処分とは、廃棄物処理法において、
『埋立処分、海洋投入処分、又は再生』とされています。
最終処分場は、中間処理を行った後の残さや再生処理で再生できなかったものを処分するための施設で、
廃棄物の安定化、無機化、無害化を目的としています。
産業廃棄物の最終処分場は山間部や海岸部など、人が住む場所からなるべく離れたところに存在しており、海洋投棄と土壌還元が主な処理方法でしたが、2007年から環境保護の観点によって海洋投棄は原則禁止となりました。
土壌還元とは埋立処分のことで、最終処分場での埋め立てによる処分のことを指します。
埋立処分・海洋投入処分に続き再生とありますが、これは有価売却やセメントリサイクル・燃料化等も含まれます。再生(リサイクル)による処分が最終であるということから再生も最終処分の方法に含まれます。
中間処分場では、産業廃棄物を脱水、焼却、粉砕や破砕をしたり、リユース・リサイクルなど中間処分を行うことで廃棄物の量を減らすことができます。
産業廃棄物の最終処分場の種類
産業廃棄物の最終処分場は、「遮断型最終処分場」「安定型最終処分場」「管理型最終処分場」の3種類あります。
平成25年4月1日時点の産業廃棄物最終処分場の総数は、3つの種類をあわせて1,942施設。そのうち、安定型最終処分場が1,164施設と最も多くなっています。
参考:産業廃棄物処理施設の設置状況について(環境省)
ここからは3種類の最終処分場についてどのような処分を行っているところであるかを解説していきます。
遮断型最終処分場
産業廃棄物の中には、有害な物質を含む廃棄物も少なくありません。
- 燃え殻
- ばいじん
- 汚泥
- 鉱さい
- 重金属
- 基準を超える化学物質を含む廃棄物
上記の品目含む廃棄物を『遮断型最終処分場』は、環境保護の観点によってコンクリートの囲いと屋根という周囲から遮断された厳重な構造の施設で最終処理を行います。
遮断型最終処分場は厳重な構造が求められるので、以下のように3つの基準が設けられています。
- 鉄筋コンクリート製による、処分場内と外部の仕切り施設のある貯蔵構造物
- 一区画の規模設定が埋め立て面積50平方メートル以下、埋め立て容量20立方メートル以下
- 地表水の流入を防止する雨水排除施設の設置
上記の基準に加えて、『遮断型最終処分場』は有害物質の埋め立て処分を行うので、長い期間の維持と管理が必要になります。
そのため、有害な産業廃棄物の埋め立て処分後は、外側の仕切り施設と同じく、内側の仕切り施設によって閉鎖するように定められています。
安定型最終処分場
最終処分場の種類のなかでも最も施設の数が多い『安定型最終処分場』は、その名の通り有害物質や有機物が付いていない産業廃棄物で、雨水にさらされても変化しない安定した廃棄物の最終処分場です。
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- コンクリートくず
- ガラスくず
- がれき類
- 陶磁器くず
- 環境大臣指定のこれらに準ずる品目
安定型最終処分場で最終処分できる産業廃棄物は上記のとおりですが、上記の品目でも自動車などの破砕物や水銀使用製品の産業廃棄物は、有害物質を含んでいるので安定型最終処分場で処分することはできません。
安定型最終処分場の維持と管理の基準は、以下の3点です。
- 搬入物の展開検査の実施
- 定期的な浸透水の水質検査の実施
- 産業廃棄物の埋め立て処分後に、さらにその土地を埋め立て処分以外のことに利用する場合は、
50cm以上の土砂などで覆い、開口部を閉鎖すること
安定型最終処分場で処分される産業廃棄物は、有害物質を含まないものが前提になるので、環境汚染を生じさせないものと判断されています。そのため、安定型最終処分場の内側・外側を遮断型最終処分場のように遮断するための遮水工の設置義務はありません。
管理型最終処分場
『有害物質を含む産業廃棄物は遮断型最終処分場へ』
『有害物質ではない産業廃棄物は安定型最終処分場へ』
このように判断するとシンプルですが、
「安定型、遮断型の産業廃棄物でもない産業廃棄物や安定型と遮断型の産業廃棄売物が混ざり合った産業廃棄物」の場合は、『管理型最終処分場』で処分を行います。
管理型最終処分場は微量の有害物質を含む産業廃棄物の最終処分場で、以下の廃棄物を処分します。
- 汚泥
- 紙くず
- 燃え殻
- 木くず
- 繊維くず
- 動物の死体
- 動植物性残さ
- 動物の糞尿
- 鉱さい
- ばいじん 等
管理型最終処分場は、微量でも有害物質や有機物を含む産業廃棄物の処理を行う施設なので、以下の構造基準を確実に満たす必要があります。
- 浸出液処理設備の設置
- 二重構造の遮水層の設置
- 地表水の流入防止のための雨水排除施設の設置
さらに維持と管理の基準には、以下の3点が定められています。
- 浸出水処理施設で浄化する放流水の排水基準
- 発生ガスの対策と管理
- 埋め立て後に50cm以上の土砂などで覆い、開口部を閉鎖
以上3つの最終処分場によって、産業廃棄物は適切に処理される仕組みになっています。
産業廃棄物の最終処分場が抱える問題と課題
産業廃棄物の最終処分場は、先程記述したとおり平成25年4月時点で1,942施設あり、いくらでも産業廃棄物を埋め立てて処分できるのではないかと考えてしまいますが、実際はそうではありません。
最終処分場は現在、深刻な問題と課題を抱えています。
最終処分場の残余年数は年々減少傾向にある
産業廃棄物の最終処分場は年々新設や増設が行われてはいますが、最終処分場に運ばれる産業廃棄物は増加傾向にあり将来的に最終処分場が不足する可能性もございます。
環境省が公表しているデータによると、令和元年度の全国の産業廃棄物の総排出量は3億8,596万トンで、前年度と比べると約700万トン増加しています。そこからリサイクルやリユースなどさまざまなかたちで再生処分され、最終的な処分量は前年度と比べると約3万トンも増加しています。
わたしたちの豊かな生活は、大量生産・大量消費、そして大量廃棄によって成り立っているので、一般廃棄物と同様に産業廃棄物でも年々廃棄物の量が増加しています。そうすると、必然的に最終処分場に運ばれる産業廃棄物の量も増加します。
コップに入れられる水に限りがあるように、産業廃棄物の最終処分場で埋め立てられる廃棄物の量も有限です。
環境省のデータによると、2018年度の産業廃棄物の最終処分場の残余容量は1.56億立法メートル。最終処分場の“寿命”となる残余年数にいたっては17.4年。
つまり約20年後には、産業廃棄物を埋め立てて処分することができなくなるということになります。
不適正管理・不適正保管の問題も
産業廃棄物が抱える問題としては、不適正管理・不適正保管もあげられます。
ご紹介したように、産業廃棄物の種類によって遮断型もしくは安定型、安定型ではないけれど遮断型最終処分場で処分するほどでもなければ管理型最終処分場へというように、適切に処理する方法が定められています。
しかし、なかにはきちんと管理がされずに、例えば安定型最終処分場に腐敗性の産業廃棄物が持ち込まれたり、管理型最終処分場での浸出水処理が不十分で、有害物質が公共水域に漏れてしまったりする問題が深刻化しています。
また、事業者のなかには産業廃棄物をさまざまな事情で一時保管するケースが多いですが、定められた収集運搬の過程の中で一定の限度を超えて長期大量に保管しているケースがあります。
こうなると不適正処理や不法投棄と変わらず、『もし事業者が経営破綻してしまうとその産業廃棄物をどうやって処理するのか』という問題になってきます。
適切な産業廃棄物の処分が重要なカギになる
最終処分場の残余容量と残余年数の問題、不適正管理と不適正保管の問題。
産業廃棄物の処理にはさまざまな問題が複雑に絡み合っていて、すべてを解決しなければ将来的に「そもそも産業廃棄物を処理できない」ということになりかねません。
ではどうすればいいのかというと、適切に産業廃棄物を処理することがカギになります。
リサイクルできる産業廃棄物はリサイクルし、環境に配慮して自然に有害物質が流出しないように処理しなければいけません。
そのためには、信頼できる収集運搬業者や処理業者に産業廃棄物の処理を委託することが重要です。
参照
産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度実績)について|環境省
第3章 循環型社会の形成|環境省
まとめ
中間処分場で処分できなかった産業廃棄物は、最終処分場で埋め立てにて処分されます。
この最終処分場は『遮断型』『安定型』『管理型』の3つの種類があり、あわせて1,942施設あります(平成25年4月1日時点)が、コップに入れることができる水に限りがあるように、各最終処分場で埋め立てられる産業廃棄物も有限です。
おおよそ約20年後には産業廃棄物を処理できないことになりかねません。
そうならないために産業廃棄物を適切に処理して、再生できる廃棄物は分別を厳守しリサイクルやリユースを行い、再生できない産業廃棄物であっても中間処分にて量を減らし、適切な最終処分場にて適切に処分を行うことが排出者の責任において重要です。
そのためには、信頼できる収集運搬や処理業者の選定が不可欠。
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