私たちが生活するうえで必ずゴミが排出されますが、このゴミには種類があることをご存知でしょうか?
大きく『産業廃棄物』と『一般廃棄物』の2つに分けられ、さらに枝分かれ式に細かく分類されています。
これらを収集・運搬・処理する事業者も排出する事業者もそれぞれの違いについて把握しておきましょう。
こちらの記事を読んでわかること
- 産業廃棄物と一般廃棄物の違い
- 産業廃棄物と一般廃棄物の種類の違いと具体例
- 産業廃棄物と一般廃棄物の許可の違い
- 産業廃棄物と一般廃棄物の処理を誤ったときの罰則
産業廃棄物や一般廃棄物の違いについてよくわかる内容になっているのでぜひ最後まで読んでみてください
産業廃棄物と一般廃棄物の違い
私達が『ゴミ』と呼ぶもののなかには、『産業廃棄物』と『一般廃棄物』の2種類があります。
それらはすべては廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下 廃棄物処理法)という法律によって定義が設けられているので、ゴミの種類に応じて正しく処理する必要があります。
ここからは『産業廃棄物』と『一般廃棄物』の違いについて解説していきます。
事業活動に伴って排出されるゴミが『産業廃棄物』
産業廃棄物とは、簡単に説明すると事業活動に伴って排出されるゴミのことです。
更に産業廃棄物に品目の定義が存在しており、
事業活動を伴って排出され、廃棄物処理法で定められた20品目のゴミが産業廃棄物となります。
20品目の具体例については後述しますが、それ以外のゴミについては『一般廃棄物』となり、
会社などの事業所から排出されるものに関しては『事業系一般廃棄物』となります。
事業活動 と大きく条件を絞って説明していますが、ここでいう事業活動とは製造業や建設業などの業務だけではなく、オフィスや商店での商業活動、学校などの公共的事業も含まれるため注意が必要です。
『産業廃棄物』と呼ばれているため生活するうえでは遠い存在のように感じますが、職場や学校などでも排出される一般廃棄物以外のゴミが対象となるため意外と身近な存在とも言えます。
『一般廃棄物』の種類
一般廃棄物とは、簡単に説明するとわたしたちの家庭から排出されるゴミと定義上では前述したように、事業者から排出される廃棄物の中で、廃棄物処理法で定められた20品目の産業廃棄物以外のゴミが一般廃棄物となります。
要するに一般廃棄物の種類は大きく分けて一般家庭から排出される『一般廃棄物(家庭ゴミ)』と、会社やお店など事業活動に伴って排出される『事業系一般廃棄物』の2種類があります。
各自治体によって分別方法等判断が異なるため、事前にお住まいの自治体ホームページや広報誌などを確認しておくと安心です。
産業廃棄物と一般廃棄物の種類の違いと具体例
先ほどの項目で産業廃棄物と一般廃棄物の違いについて触れましたが、具体的にはどのようなものが産業廃棄物と一般廃棄物に該当するのでしょうか?
ここからは産業廃棄物と一般廃棄物の違いをごみの種類の具体例を交えながら解説していきます。
産業廃棄物・特別管理産業廃棄物・特定有害産業廃棄物の種類
産業廃棄物は廃棄物処理法で定められた20品目に該当する、事業活動に伴って排出されたゴミです。
具体的な例をあげると、梱包用の資材などでよく目にするビニールや発泡スチロールなどは、プラスチック素材でできているため20品目のでいう『廃プラスチック類』に該当します。
詳しい産業廃棄物の具体例についてはこちらの記事で解説していますので読んでみてください。
⇒20種類に分類される産業廃棄物の具体例を紹介
ここで注意が必要なのが、事業活動に伴って排出されたゴミでも
産業廃棄物に分類されず、一般廃棄物に分類されるものがあるということです。
廃棄物処理法では『あらゆる事業活動に伴うもの』と『特定の事業活動に伴うもの』を分けており、
20品目のうち7品目を『特定の事業活動に伴うもの』として定めています。
『特定の事業活動に伴うもの』に該当する7品目は下記のとおりです。
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動植物性残さ
- 動物系固形不要物
- 動物ふん尿
- 動物死体
上記の7品目は事業活動を伴って廃棄された場合でも、特定の業種ではない限り産業廃棄物には該当しない
『業種指定産業廃棄物』というものになります。
特定の業種からの廃棄のみが産業廃棄物扱いになるため、こちらの記事(20種類に分類される産業廃棄物の具体例を紹介)で紹介している指定の業種以外からの排出は『事業系一般廃棄物』の扱いとなります
ただし、木くずについてはこちらの記事(木製パレットはどう処理することが正解でしょうか?)でご紹介しているように木製パレットは産業廃棄物としての扱いになることや、繊維くずは天然繊維のみで合成繊維は該当しないなど一部注意が必要です。
また、産業廃棄物のなかでも爆発性や毒性・感染性があり、人の健康や生活環境に被害を与える危険性があるものに関しては『特別管理産業廃棄物』に分類されます。
特別管理産業廃棄物は、『特別管理産業廃棄』の4品目と11品目を含む『特定有害産業廃棄物』に分類されます。
区分 | 主な分類 | 概要 | |
特別管理産業廃棄物 | 廃油 | 揮発油類、灯油類、軽油類(難燃性のタールピッチ類等を除く) | |
廃酸 | 著しい腐食性を有するpH2.0以下の廃酸 | ||
廃アルカリ | 著しい腐食性を有するpH12.5以上の廃アルカリ | ||
感染性産業廃棄物 | 医療機関等から排出される産業廃棄物であって、感染性病原体が含まれ若しくは付着しているおそれのあるもの | ||
特定有害産業廃棄物 | 廃PCB等 | 廃PCB及びPCBを含む廃油 | |
PCB汚染物 | PCBが染みこんだ汚泥、PCBが塗布され、又は染みこんだ紙くず、PCBが染みこんだ木くず若しくは繊維くず、PCBが付着し、又は封入されたプラスチック類若しくは金属くず、PCBが付着した陶磁器くず若しくはがれき類 | ||
PCB処理物 | 廃PCB等又はPCB汚染物を処分するために処理したものでPCBを含むもの | ||
廃水銀等 | 1.特定の施設において生じた廃水銀等 2.水銀若しくはその化合物が含まれている産業廃棄物又は水銀使用製品が産業廃棄物となったものから回収した廃水銀 | ||
指定下水汚泥 | 下水道法施行令第13条の4の規定により指定された汚泥 | ||
鉱さい | 重金属等を一定濃度を超えて含むもの | ||
廃石綿等 | 石綿建材除去事業に係るもの又は大気汚染防止法の特定粉じん発生施設が設置されている事業場から生じたもので飛散するおそれのあるもの | ||
燃え殻 | 重金属等、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの | ||
ばいじん | 重金属等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの | ||
廃油 | 有機塩素化合物等、1,4-ジオキサンを含むもの | ||
汚泥、廃酸又は廃アルカリ | 重金属等、PCB、有機塩素化合物等、農薬等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの |
参考:環境省(https://www.env.go.jp/recycle/waste/sp_contr/)
これらの特定有害産業廃棄物は、通常の産業廃棄物よりも厳しい規制と処理基準を設けているので、
排出する際は十分に気をつける必要があります。
医療廃棄物・感染性一般廃棄物・非感染性一般廃棄物の種類
産業廃棄物のなかでも看護や医療の現場から排出される産業廃棄物は、一般廃棄物ではなく『医療廃棄物』として処理します。
医療廃棄物とは、病院などの医療機関などで医療行為によって排出されたゴミのことで、患者の血液や体液が付着した医療器材などの産業廃棄物を指します。また、看護や医療の現場でも事業系一般廃棄物として処理するものがあるので、以下を参考にしてみてください。
血液 血液や体液が付着したものすべて 金属製機械器具 金属製ベッド レントゲン現像廃液 消毒用アルコール 天然ゴムの器具類 合成樹脂製器具 ディスポーサブル手袋 アンプル ガラス製の器具 ギブス用の石膏 など |
紙くず類全般 ディスポーザブル製品の入っていたパッケージ 残飯 未使用のガーゼや脱脂綿 リネン類 皮革類 実験動物の死体 など |
上記の他に、看護や医療現場から排出される廃棄物には『感染性廃棄物』と『非感染性廃棄物』の2種類にわけられます。
『感染性廃棄物』は、病原体によって人に感染する恐れのある廃棄物で、さらに『感染性一般廃棄物』と『感染性産業廃棄物』にわけられます。
感染性廃棄物の処理方法については環境省が公開している情報を参考に正しく安全に処理しましょう。
⇒感染性廃棄物処理マニュアルの改定について
看護や医療の現場で排出される産業廃棄物については、処理方法についても感染性廃棄物であれば、
赤色,黄色もしくは橙色のバイオハザードマークを金属製、あるいはプラスチック製の貫通しない容器など各廃棄物の性質にあった容器に貼り付けて処理します。
非感感染性廃棄物の医療廃棄物であれば、自治体が定める方法で正しく処理します。
一般廃棄物・事業系一般廃棄物・特別管理一般廃棄物の種類
具体例 | ||
可燃ゴミ | 生ゴミや木くずなど | |
不燃ゴミ | 食器やガラス、陶磁器、フライパンなど | |
粗大ゴミ | タンスや食器棚など大型の臨時ゴミ | |
家電4品目 | 洗濯機、エアコン、テレビ、冷蔵庫 | |
自転車 | 自転車 | |
パソコン | パソコンや周辺機器 | |
有害ゴミ | 乾電池や蛍光灯、体温計など有害物質を含むゴミ | |
可燃ゴミ | 生ゴミなど | |
粗大ゴミ | 食器棚や机などの大型臨時ゴミ | |
し尿 | くみ取りし尿やトイレットペーパー、綿類など | |
浄化槽に係る汚泥 | 浄化槽に貯留した汚泥 |
前述したように廃棄物処理法で定められた20品目の産業廃棄物以外のゴミを大きく一般廃棄物と指し、上記のように家庭から排出される『一般廃棄物(家庭ゴミ)』と、事業活動に伴って排出される『事業系一般廃棄物』に分けられます。
上記にある一般廃棄物の具体例は一例で、実際には各自治体によって判断が異なるので、自治体が定める方法で正しく分別して処理することが大切です。
また一般廃棄物の中でも、毒性や爆発性などがある危険なものに関しては、以下の表にある
『特別管理一般廃棄物』に分類されます。
PCB含有部品 | エアコンやテレビ、電子レンジの部品でPCBが 含まれるもの |
ばいじん | 焼却施設の集塵施設で集められたばいじん |
ばいじん 燃えがら 汚泥 | 廃棄物焼却施設から生じたもので、ダイオキシン類の 含有量が3ng/gを超えるもの |
感染性 一般廃棄物 | 看護や医療の現場で外出された、一般廃棄物であって、 感染病原体が含まれるもしくは含まれる恐れのあるもの |
また特別管理一般廃棄物と間違えやすいのが、『特別管理産業廃棄物』や『特定有害産業廃棄物』です。
前述したように、こちらは産業廃棄物のなかで爆発性や毒性・感染性があるもので、人の健康や生活環境に被害を与える危険性があるものは『特別管理産業廃棄物』。特に有害性の高い物質は『特定有害産業廃棄物』に分類します。
産業廃棄物と一般廃棄物の許可の違い
ここまで産業廃棄物と一般廃棄物に違いと、ゴミの種類の違いについて解説しました。
ゴミの種類が異なれば、都道府県や各市区町村から得る各種許可にも違いがあります。ここからは、産業廃棄物と一般廃棄物の許可の違いについて解説していきます。
産業廃棄物処分業許可・産業廃棄物収集運搬業許可とは
産業廃棄物の処分を請け負うときは『産業廃棄物処分業許可』が、産業廃棄物の収集・運搬を請け負うときは『産業廃棄物収集運搬業許可』が必要になります。
『産業廃棄物処分業許可』は、都道府県知事、もしくは政令指定都市の市長が産業廃棄物の中間処分と最終処分を許可した業者に交付する許可のことです。
『産業廃棄物収集運搬業許可』は処分業許可同様に都道府県知事、もしくは政令指定都市の市長が産業廃棄物の収集・運搬を許可した業者に交付する許可のことです。
産業廃棄物の処分や収集・運搬を実施する際には同業務の許可を所持している業者のみが行うことができるため、排出者は必ず許可を所持している業者へ業務を委託し、契約書を締結した上で排出時にマニフェストを発行し、産業廃棄物の処理の行方をしっかりと管理するなど、正しい対応をしていかなければなりません。
許可の申請には講習会の受講や申請書類の提出が必要となります。申請方法については各自治体のホームページなどをよく確認してください。
また、許可の取得には申請からおおよそ3ヵ月かかり、許可の有効期限は5年(優良認定事業者の場合は7年)と期限があるため事業を継続して行う場合は許可更新申請を行う必要があります。
優良認定事業者についてはこちらの環境省ページをご確認ください。
⇒優良産廃処理業者認定制度
一般廃棄物処理業許可(処分・収集運搬)とは
一般廃棄物の処分や収集運搬を請け負う際は、『一般廃棄物処理業許可』が必要です。
先ほどの産業廃棄物処分業・収集運搬業許可は都道府県(政令指定都市であれば市長)に許可申請を行いましたが、一般廃棄物処理業許可は市区町村に許可申請を行います。
この一般廃棄物処理業許可ですが、許可取得が難しいことで有名です。
なぜ難しいかというと、「市区町村として一般廃棄物の収集や運搬、処分を行うことが困難な状況でないと事業者に許可を認められない」という理由があります。
先ほどの産業廃棄物処分業許可の場合は、処分業を行う事業者自身の施設や能力、基準に適合するかを審査して許可取得を行いますが、一般廃棄物処理業については廃棄物処理法で「市町村側で必要とする状況でなければ,新規に認めてはいけない」と定められています。
一般廃棄物処理業許可は産業廃棄物処分業許可と異なり自由競争ではなく、現状どの市区町村でも処理計画が能力過剰状態であるからです。
近年のリサイクルやリユースの促進などで、全国的にゴミの排出量は減少傾向にあります。
市区町村ごとに差はありますが、ほとんどの市区町村で一般廃棄物の処理能力が過剰な状態になっていて、現状の一般廃棄物処理業許可業者で十分対処できているという背景があります。
そのため、そもそも一般廃棄物処理業許可業者の新規受付をしていない市区町村も多いです。ただし,許可が無くても一般廃棄物を運ぶことの出来る例外が存在します一例として以下のケースです。
- 家電リサイクル法に規定される指定取引場所及び許可施設への収集運搬
(家電リサイクル法の例外) - 事業系一般廃棄物のうち特定再生資源(専ら物)のみの収集運搬
- 造園作業に伴い発生する事業系一般廃棄物のみの収集運搬(自社運搬)
このように条件付きではありますが一般廃棄物の許可なく廃棄物を運ぶことが出来ることもあります。
産業廃棄物と一般廃棄物の処理を間違えた場合の罰則
産業廃棄物を一般廃棄物として処理、一般廃棄物を産業廃棄物として処理した場合は、
不法投棄となり5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または両方が課せられる
可能性があります。
悪意がなくても誤った処理を行うことで罰せられてしまうことも多いため、産業廃棄物や一般廃棄物の
分別や適切な処理には細心の注意を払いましょう。
まとめ
産業廃棄物と一般廃棄物の違いは、大きく分けると
事業活動に伴って排出されたゴミが産業廃棄物、家庭から排出されたゴミが一般廃棄物ですが、
厳密に言えば事業活動に伴って排出される事業系一般廃棄物や、看護や医療の現場から排出される医療系廃棄物など種類が多岐にわたります。
また、収集運搬・処分するゴミの種類が異なるということは、都道府県や市区町村から得る許可も異なります。産業廃棄物と一般廃棄物では許可の取得方法や条件、取得の可否についても異なります。
産業廃棄物や一般廃棄物の処理を速まると法律で罰せられることもあるため、
廃棄のルールを学び、正しく分別・処理を行いましょう。