産業廃棄物は適切に運搬をしなければ罰則の対象になります。
そのため、以下の3つの方法のいずれかで産業廃棄物を処理することになるでしょう。
1.産業廃棄物収集運搬業許可を得て産業廃棄物を運搬する 2.自社で運搬する 3.産業廃棄物収集運搬許可取得業者へ委託して運搬してもらう
今回は、上記3つの産業廃棄物の運搬方法について、以下のことがわかる内容になっています。
- 産業廃棄物の定義とは?許可取得までの流れと条件
- 許可不要で運搬できる「自社運搬」とは?条件とルール
- 産業廃棄物収集運搬業者に委託して運搬するときのポイントと注意点
産業廃棄物の運搬について詳しく知ることができる内容になっているのでぜひご参考ください。
産業廃棄物の定義とは?許可取得までの流れ
私たちは不用品を総じて「ごみ」と呼びますが、ごみにも大きく分けて2種類ございます。
その2種類は「家庭系から排出される廃棄物」と「会社から排出される事業系廃棄物」となり、
更に「事業系廃棄物」は「事業系一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分けられます。
そして「産業廃棄物」はさらに細かく「プラスチック類」「鉄くず」「繊維くず」などの種類があります。
ここからは、産業廃棄物とはそもそも何なのか?産業廃棄物の種類と扱い方、産業廃棄物収集運搬に必要な「マニフェスト」について、産業廃棄物収集運搬業許可取得までの流れについて解説していきます。
産業廃棄物とは何なのか?種類と扱い方
簡単に産業廃棄物のことを説明すると、「事業活動に伴って排出されたごみのこと」です。
産業廃棄物は法律によって種類が定められていて、燃えがらや廃油、紙くず、鉄くずなど全部で20種類に分類されており、種類によって扱い方がことなります。
例えば、燃えがらや廃油、廃プラスチック類、ばいじんなど12種類の産業廃棄物は、排出された時点でどのような事業活動であっても「産業廃棄物」として扱われます。
一方で、紙くずや木くず、動物の糞尿などの7種類の産業廃棄物は、建設業にかかわる事業活動で排出されたり、畜産農業から排出されたりなど特定の業種に限り産業廃棄物として扱われます。これを「業種指定産業廃棄物」と呼ばれています。
それ以外の事業活動から排出された紙くずや木くずなどは、家庭から排出されるごみと同じ一般廃棄物として扱われます。
最後に、産業廃棄物のなかでも毒性があったり、人や環境に影響を与える恐れがあったりする産業廃棄物は、「特別管理産業廃棄物」と呼ばれています。
特別管理産業廃棄物は、産業廃棄物収集運搬業許可だけでは収集や運搬ができず、別に「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。
産業廃棄物の運搬には原則「マニフェスト」が必要
産業廃棄物の収集や運搬には、以下で解説するケースを除いて原則として「マニフェスト」と呼ばれる専用伝票が必要になります。
マニフェストは「産業廃棄物管理表」とも呼ばれていて、排出事業者はマニフェストと産業廃棄物をセットで移動させることで、運搬業者、処分業者等のそれぞれに産業廃棄物の情報を正しく伝え、且つ問題無くと処理されているかどうかを管理確認することができます。
マニフェストはA〜E票まであって、A票は発行から5年間、B〜E票は返送されてきて受け取った日から5年間の保管期間が法律で定められています。
A票とB〜E票は同じ5年間でもそれぞれタイミングが異なるので、最も長い期間保管することになるE票を目安に5年間保管するとトラブルを防ぐことができます。
産業廃棄物マニフェストは、5年もの長い期間を紙の書類として保管しておくと紛失のリスクが高まるだけではなく、管理する手間や労力、スペースの問題も考えなければならないので、最近では電子マニフェストとしてクラウド上に保管して管理する方法が推奨されています。
特に特別管理産業廃棄物の排出量が多い事業者は、電子マニフェストの利用が義務化されています。
弊社は電子マニフェストの簡素化及びその他の廃棄物管理業務支援させていただく廃棄物総合管理システム「 Wing」を提供させていただいております。
許可証の管理や委託業者の把握・選定基準の明確化、廃棄状況・処理コストの比較、有価物の市況情報のご提供など幅広い業務をサポートすることが可能です。電子マニフェストだけでなく廃棄物全体を管理する際にお役立ていただければと思います。
産業廃棄物収集運搬業許可取得までの流れ
ごみには一般廃棄物と産業廃棄物がありますが、一般廃棄物の許可は市区町村長の許可が必要で、産業廃棄物の許可は都道府県知事の許可が必要になります。
そのため誰でも簡単に産業廃棄物を収集・運搬できるというわけではありません。
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するまでには、以下の条件を満たす必要があります。
1.公益社団法人 日本産業廃棄物処理振興センターの講習を受講するなどして、産業廃棄物収集運搬業を行
える知識・技能がある
2.廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」又は「廃棄物処理法」という。)を熟知している
3.暴力団員や破産者で復権を得ないものなど、欠格条項に該当しない
4.廃棄物が飛散するおそれがないなどの適切な運搬車や、運搬容器、その他の運搬施設を有している
5.取り扱う予定の産業廃棄物(特別産業廃棄物)について十分な知識を持っている
これらの条件を満たした上で、都道府県知事に対して許可申請を行うことで、ようやく産業廃棄物収集運搬業許可を取得することができます。
産業廃棄物収集運搬業許可の申請には、各都道府県で必要な書類が異なるので、自治体ホームページを確認後、あらかじめダウンロードして記載してから窓口で許可申請、あるいは郵送で許可申請するとスムーズです。
許可申請の際は、新規の場合で全国一律81,000円の手数料を納める必要があります。
また、産業廃棄物を収集・運搬する際に、都道府県をまたぐこともあるでしょう。
この場合は、収集運搬に際して利用する都道府県に対して許可を得る必要があります。
許可申請の審査はおおよそ3か月程度かかりますが、許可の有効期限は5年間なので、産業廃棄物収集運搬の都度許可申請が必要というわけではありません。
許可証不要で産業廃棄物を自社運搬できるケースは?
産業廃棄物を処理するときは、産業廃棄物処理業者に委託することが多いと思いますが、排出事業者が自ら運搬することもできます。
自社で運搬する際は、運搬時の決められたルールを守れば産業廃棄物収集運搬業許可の許可証が不要になるので、スムーズな処理が可能です。
ここからは産業廃棄物の自社運搬について、許可不要でできるケースと注意点について解説していきます。
許可不要で産業廃棄物を自社運搬できるケース
- 自社から産業廃棄物処理委託業者まで運搬する
- 自社間で産業廃棄物を運搬して移動する
- 元請け先の現場から元請け先自らが自社まで運搬する
- 元請け先の現場から元請け先自らが委託先の中間処理場まで運搬する
上記に該当する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可の許可証不要で自社運搬することができます。
ただし、元請け先の現場にあった産業廃棄物でも、第三者が置いていったものは自社運搬することができません。
第三者が置いていった産業廃棄物を運搬する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可の許可証が必要になります。
自社で産業廃棄物を運搬するときの注意点
産業廃棄物を自社運搬する際は、3つのルールを守る必要があります。
まず1つ目は、「車両表示義務」を守ることです。
車両表示義務とは、「産業廃棄物収集運搬車両」の表記と、社名を車体の両側にわかりやすい大きさと色で表示する必要があります。
2つ目は、「書面の携帯」です。
自社で産業廃棄物を運搬する際は許可証が不要ですが、廃棄物の情報が記載された書面の携帯は必須です。
- 氏名、名称、住所
- 運搬する産業廃棄物の種類と量
- 運搬する産業廃棄物を積載した日
- 積載した事業場の名称、所在地、連絡先
- 運搬先の事業場の名称、所在地、連絡先
上記5つを明記した書面を携帯する必要がありますが、書面は紙の書類としてだけではなく、スマホやタブレットで確認できる状態であっても問題ありません。
例えば、紙の書類をスマホやタブレットのカメラで撮影したものや、PDFデータなどです。
最後3つ目は、「収集・運搬基準の遵守」です。
- 廃棄物が飛散、流出しないようにする
- 悪臭や騒音、震動によって保安上の支障が生じないようにする
- 船舶を用いて運搬する場合も表示義務・書面の携帯を行う
- アスベストは他の廃棄物とわけて運搬する
ここまで解説した3つのルールのうちひとつでも守れていない場合は、行政から改善命令を受けることになります。
繰り返し違反行為を行えば、刑罰や社名の公表が行われることもあるので注意しましょう。
自社の処理場で処分する場合はマニフェスト不要
自社運搬で産業廃棄物を運搬する場合は、条件を満たせば許可証なしで運搬することができます。
また、自社の処理場を使用して産業廃棄物を処理する場合においては、産業廃棄物マニフェストは不要です。
しかし、他の処理場で自社運搬した産業廃棄物を処理した場合はマニフェストが必要になるので注意しましょう。
再生利用目的の廃棄物もマニフェスト不要
『専ら物』と呼ばれる,古紙や空き缶、鉄くずなど再生利用目的の廃棄物は産業廃棄物の収集運搬の許可は必要ありません。
産業廃棄物を委託して処分する場合の業者の選び方と注意点
産業廃棄物収集運搬業許可を取得せずに産業廃棄物を運搬するなら、産業廃棄物収集運搬業者に委託して運搬する方法もあります。
ここからは、産業廃棄物の運搬を委託するときのポイントとして、運送業と産業廃棄物収集運搬業の違いと、3つの注意点を解説していきます。
運送業と産業廃棄物収集運搬業の違い
産業廃棄物の運搬は、産業廃棄物収集運搬業者に委託することができますが、さまざまな業者が御座います。
産業廃棄物の運搬を専門としているところから、貨物の輸送を本業としつつ、産業廃棄物収集運搬業許可を得ているなどのケースもあります。
ここで運送業と産業廃棄物収集運搬業者の違いを把握しておきましょう。
運送業は貨物の輸送を行うことができる業者のことで、運賃や手数料をもらって貨物や旅客を輸送する事業のことです。
輸送業にはわたしたちの身近な陸上の輸送機関を使って運ぶ陸上運送に限らず、船を使う海上運送や、航空機を使う航空運送があります。これらすべて運送業です。
特に私たちとなじみが深い陸上輸運送については、「他人の需要に応じて、有償で自動車を使用して貨物を輸送する事業」と貨物自動車運送法で定められています。
運送業は「運送業許可」を得ている業者のことで、廃棄物の収集運搬の許可を得ていなければ一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬はできません。
一方で廃棄物収集運搬業者は、前述したように運送や手数料をもらって廃棄物を運ぶ事業のことで、都道府県知事から許可を得た事業者のみが産業廃棄物の収集運搬を行うことができます。
こちらも、産業廃棄物収集運搬業許可を得ていても、運送業許可を得ていなければ貨物の運送はできません。
このように、同じモノを運ぶ運送業と産業廃棄物収集運搬業ですが、得ている許可が異なるので、運べるモノの種類が異なります。
産業廃棄物の運搬は産業廃棄物収集運搬業許可を得ている業者に委託する
ここまで解説してきたことを整理すると、以下のようになります。
- 運送業は貨物を運ぶ事業なので、廃棄物は運べない
- 産業廃棄物収集運搬業は産業廃棄物を運ぶ事業で、貨物は運べない
そのため、産業廃棄物の処理を委託する場合は産業廃棄物収集運搬業許可を得ている業者へ委託する必要があります。
もし産業廃棄物収集運搬業許可を得ていない業者に産業廃棄物の運搬を依頼した場合、依頼主である排出事業者に対して5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、あるいは両方が科せられます。
産業廃棄物収集運搬業に処理を委託するときは、許可を得ていることだけではなく、以下のポイントも確認しておくと安心です。
- 廃棄物処理のフローが明確化にされているか
- 担当者や従業員の対応は適切か
- トラブル時に連絡体制が確立されているか
- 金額や回収日時などの契約内容をしっかり確認する
産業廃棄物は適切な方法で処理されていない場合、罰則の対象になります。
そのためどのようなフローで排出した産業廃棄物が処理されるかを確認しておきましょう。
不測の事態に備えて、トラブルの際にすぐに委託業者と連絡が取れることも大切です。
事業所の電話番号だけではなく、担当者直通の電話番号やメールアドレスも確認しておきましょう。
産業廃棄物を委託して処理するときの3つの注意点
自らが産業廃棄物の処理をするのではなく、委託して処理する場合には以下の3つの注意点があります。
- 産業廃棄物収集運搬業の許可を得ている運搬業者および処分業者に依頼する
- 業者とは事前にそれぞれ委託契約書を取り交わす
- 委託契約書は業務が終了した日から5年間保管する
特に契約書は業務終了日から5年間保管する必要があるので、紙の書類として保管するのではなく、電子データとして保管することをおすすめいたします。
産業廃棄物の排出時には契約書だけではなくマニフェストも取り交わされるので、あわせて保管できる廃棄物総合管理システム 「Wing」の導入が便利です。
マニフェストや契約管理に限らず、コスト管理やコンプライアンス管理、実績管理などを全国規模で一元管理に対応いたします。
これまで業界・業種を問わずに約1,500社の企業様でご利用いただいてきた実績がございますのでぜひお役立てください。
まとめ
産業廃棄物とは事業活動にともなって排出されるごみのことで、処理をするには①産業廃棄物収集運搬業許可を得て処理する②自社運搬する③委託して処理を行うの3つの方法のいずれかで処理します。
産業廃棄物の処理には、マニフェストや契約書など書類を取り交わすだけではなく、法律で定められた期間、保管する必要があります。
そのため紙の書類として保管しておくと、紛失や管理の手間などが必要になるので、電子データとして保管することをおすすめします。
弊社の「Wing」は、電子データとして取り交わしたマニフェストや契約書などを効率的に管理できる、産業廃棄物総合管理システムです。
これまで業界・業種を問わず約1,500社にご活用いただいてきた実績がございますので、ぜひ御社の管理業務にもご活用ください。