産業廃棄物の保管に関する基準は、法律で定められています。
産業廃棄物の保管施設はこの基準を守る必要があるので、施設の環境や産業廃棄物の種類・性質ごとに適切に保管するようにしましょう。
そこで今回は、産業廃棄物の保管施設の基準について、以下のことがわかる内容になっています。
- 産業廃棄物保管施設の6つの基準
- 産業廃棄物を屋内・屋外で保管するときの注意点
- 産業廃棄物が持つ性質ごとの保管上の留意点
- 産業廃棄物の基準をクリアする保管方法
産業廃棄物の保管基準についてよくわかる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
産業廃棄物保管施設の6つの基準
産業廃棄物の収集・運搬や処理を外部委託しているケースが多いと思いますが、この場合も産業廃棄物を委託業者に引き渡すまで適切な環境で保管する必要があります。
そこでここからは、産業廃棄物の保管施設の基準を6つ解説していきます。
囲いを設置する
産業廃棄物を保管する際は、流出を防ぐために「囲い」を設置することが基準として定められています。
しかしこの囲いの定義は定められておらず、法律上では”保管場所の周囲に囲いが設けられていること”と記載されています。
その他には“保管する産業廃棄物の荷重が囲いに直接かかる場合には、その荷重に対して、構造耐力上安全であること”と明記されています。 しかし、これだけでは明確にどうすればいいのか判断に困ります。
囲いとしてロープを張ればいいのか、粒度の細かい廃棄物でコンクリートの囲いにしなければならないのか…。 ここの判断は「各自に任す」ということになりますが、“保管する産業廃棄物の荷重に耐えられる強度が必要”というのは守らなければなりません。
掲示板・看板を設置する
産業廃棄物を保管する場所には、「ここは産業廃棄物を保管している場所です」ということがわかるように、掲示板や看板をわかりやすい場所に設置することが基準として定められています。
この掲示板はどんな大きさでもいいというわけではなく、サイズにも基準があります。
看板や掲示板のサイズは、縦60cm×横60cm以上であることが必要で、文字の大きさやフォント、色について基準はありませんが、遠くからでもわかるように工夫する必要があります。
産業廃棄物の保管場所に設置する看板や掲示板には、必ず記載しなければならないことがあるので、以下の記事をぜひ確認してみてください。
産業廃棄物の一時保管場所における表示義務とは?看板・掲示板への表示内容と基準
飛散・流出・地下浸水・悪臭発散を予防する
保管している産業廃棄物が飛び散ってしまったり、流れ出たりしないように予防することが基準として定められています。
また、地下への浸透や悪臭の発散を防止することも忘れないようにしましょう。
汚水が流出しないようにする
保管する産業廃棄物の種類によっては、汚水の流出が考えられるケースもあるでしょう。
この場合は、公共水域や地下水に汚水が浸透しないように予防することが基準として定められています。
例えば、汚水が地下に浸透しないように排水口や側溝を設置したり、不浸透性材料を採用して底面を舗装したりするのも有効です。
他には、油分分離層など水処理装置を採用するのも有効な方法で、産業廃棄物を容器に入れて保管したり、防水シートをかけたりするのも良いでしょう。
害虫・害獣が発生しないようにする
保管場所には、蚊やハエ・ネズミなどの害虫が発生しないようにすることが基準として定められています。
害虫や害獣が発生してしまうと産業廃棄物の保管施設だけではなく、周囲の生活環境にも悪影響を与えてしまうので、衛生管理が重要になってきます。
石綿含有産業廃棄物や水銀使用製品産業廃棄物は他のものと混ざらないようにする
最後に、石綿含有産業廃棄物や水銀使用製品産業廃棄物の場合は他の産業廃棄物と混ざらないように、仕切りを設けるなどをすることが基準として定められています。
また石綿含有産業廃棄物の場合は、他の産業廃棄物と混ざらないための対策と同時に、飛散防止のために覆いを設けたり、梱包したりすることも基準として定められています。
産業廃棄物を屋内・屋外で保管する際の注意点
産業廃棄物を保管するといっても、屋内で保管する場合と、屋外で保管する場合で分かれます。
産業廃棄物の保管施設の基準は前述した6つですが、屋内・屋外で産業廃棄物を保管する場合はそれぞれで注意点があります。 ここからは、産業廃棄物を屋内・屋外で保管するときの注意点について解説していきます。
屋内で産業廃棄物を保管する場合の注意点
プレハブ小屋やオフィスビル・商業施設の一角など、屋内で産業廃棄物を保管する場合は建物内ということで壁があるので、前述したような囲いは別途用意しなくても問題ありません。 しかし複数・数種類の産業廃棄物をまとめて保管する場合は、それぞれの産業廃棄物が混ざらないように仕切りを設けて保管するようにします。
屋外で産業廃棄物を保管する場合の注意点
産業廃棄物を容器に入れずに、屋外で積み上げて保管する場合は、以下の基準を守る必要があります。
・廃棄物が囲いに接しない場合…囲いの下端から勾配50%以下
・廃棄物が囲いに接する場合…囲いの内側2m、囲いの高さより50cm以下2m以上内側は、2m線から勾配50%以下
(勾配50%とは、底辺:高さ=2:1の傾きで約26.5度となります。)
文章では少しわかりにくいので、上記のイメージ図をご参考ください。
産業廃棄物が持つ性質ごとの保管上の留意点
産業廃棄物は20種類ありますが、液体物・汚泥物・固形物・特別管理産業廃棄物の4つにも分けることができます。
性質ごとに4つに分けた産業廃棄物では、保管するときに気をつけることがそれぞれ異なるので確認しておきましょう。
産業廃棄物の性質 | 保管上の留意点 |
液体物全般 | ・容器で保管して、ラベルなどで内容物を掲示する ・床は耐水性構造にする |
汚泥物全般 | ・流出止め仕切り付きのコンクリート床などを設ける ・浸出水などは流出しないように、マスを設ける ・搬出と搬入区画を分ける ・長期間の積み置きを防ぐために、搬出と搬入区画を交互に使用する |
固形物全般 | ・粉じん防止のために散水設備を設ける ・近くに民家がある場合は、目隠し塀を設けるなど配慮を行う ・車両の騒音や交通渋滞などが発生する場合は、搬入時間を制限する ・長期間の積み置きを防ぐために、搬出と搬入区画を交互に使用する |
特別管理産業廃棄物 | ・アスベスト廃棄物や感染性廃棄物、液状物、泥状物の保管では、適切な容器に入れて保管し、容器に内容物を掲示する ・仕切りによって特別管理産業廃棄物の種類ごとに分別する ・保管施設には掲示板や看板で表示を行う ・床は耐水性構造にする |
特に特別管理産業廃棄物の場合は、上記の表にあることに加えて、さらに細かな基準が設けられています。
特別管理産業廃棄物の種類 | 保管の際の留意点 |
廃油 PCB汚染物 PCB処理物 | 容器に入れて密封するなど、揮発防止の他に高温にさらされないようにする |
廃酸 廃アルカリ | 容器に入れて密封することや、腐敗を防ぐ |
PCB汚染物 PCB処理物 | 腐食防止のために工夫する |
廃石綿など | 梱包することや、廃石綿の飛散防止を行う |
腐敗する恐れがあるもの | 容器に入れて密封すること、腐敗を防ぐ |
感染性廃棄物 | 保管は極力短期間にとどめておき、保管場所には関係者以外立ち入らない。取扱注意の表示も忘れずに設置する。 運搬容器にはバイオハザードマークなどの表示を付けること。 注射針やメスなど鋭利な廃棄物は、耐貫通性のある密閉容器に入れて保管する |
このように、産業廃棄物の種類や性質ごとに保管する際に気をつけることが異なるので確認しておくことが大切です。
産業廃棄物の保管基準をクリアする保管方法
産業廃棄物の保管施設の基準をクリアするためには、さまざまな工夫を凝らす必要があります。
では具体的にどうすればいいのでしょうか?ここからは、保管基準をクリアする産業廃棄物の保管方法を3つ紹介していきます。
フレコンバッグで保管
フレキシブルバッグ、通称「フレコン」はポリプロピレンやポリエチレンなどの柔らかい素材でできた袋のことです。
円柱型や袋型の袋にベルトがついているので、クレーンやフォークリフトでつり上げて運ぶことができる利便性にも優れた保管容器です。
フレコンバッグは上部の投入口や、下部に排出口が設けられているものが多いので、中身を排出する際はひっくり返す手間がかからないというメリットがあります。 フレコンバッグは燃えがらや紙くず、木くず、繊維くず、鉱さい、ばいじん、廃プラスチックなど幅広い産業廃棄物を保管するのに最適ですが、注意点が3つあります。
1.破損や劣化がないか確認してから使用する
2.水漏れがないか
3.鋭利な産業廃棄物を保管すると破損の恐れがある
フレコンバッグの素材やベルト、ロープは紫外線や雨風で劣化していくので、特に屋外で産業廃棄物を保管する際は注意が必要です。
産業廃棄物の流出や事故を防ぐためにも、必ず破損や劣化がないか確認してから使用するようにします。
またフレコンバッグに汚水が発生しやすい産業廃棄物を保管する際は、防水性の高いフレコンバッグを使用したり、フレコンバッグをさらにコンテナに入れて二重にして保管するなど流出を防ぐ対策をする必要があります。
他にも雪崩や破損を防ぐためにも、フレコンバッグを積み上げて保管する際は2〜3段程度に納めておきましょう。
最後に木くずや金属片、コンクリートなど鋭利な産業廃棄物をフレコンバッグに保管すると、袋が裂けてしまう可能性があります。 そのため、パレットの上に置いて保管したり、鋭利な産業廃棄物は細かく砕いたりしてからフレコンバッグに保管するようにしましょう。
コンテナで保管
コンテナは耐久性に優れているので、がれき類や木くず、金属くず、ガラスくず、紙くず、繊維くず、ゴムくずなど幅広い産業廃棄物を保管することができます。
例えば建築現場や解体工事現場では、着脱式のコンテナ(バッカン)を装着した車両が活用されており、現場で排出された産業廃棄物を直接処理施設へ運搬することが可能です。
着脱式のコンテナの多くは天井部分がむき出しの状態になっているので、産業廃棄物が飛散や流出・悪臭・雨水の浸入を防ぐ防水シートが欠かせません。 しかし、フタ付きプラスチック製コンテナ、有害物質や紫外線に強い耐久性に優れた金属製コンテナなど、さまざまな種類があるので用途に応じて選ぶことが可能です。
ドラム缶で保管
産業廃棄物のなかでも、汚水の流出や引火、爆発の可能性がある汚泥や廃油などは、ドラム缶で保管するのが最適です。
ドラム缶には種類があって、固形物や粉末の飛散を防ぐ、取り外し可能なフタ付きの「オープンドラム缶」や、フタが固定されていて充填口から液体を入れることができる「クローズドラム缶」などさまざまです。
草木類や枯れ葉・枝など腐敗性が高い産業廃棄物をドラム缶で保管する際は、耐熱性に優れたものを選ぶと安全に保管することができます。
また、廃酸や廃アルカリなどの腐食性が強い産業廃棄物を保管する際は、プラスチック製のドラム缶や耐腐食加工されたドラム缶がおすすめです。
ドラム缶に入れて保管するほど容量がない産業廃棄物であれば、一斗缶やペール缶に保管することも可能です。
一斗缶などであれば、人の手で手軽に運ぶことができるので移動がスムーズというメリットがあります。
ドラム缶に産業廃棄物を保管する際は、ドラム缶の劣化に気をつけましょう。
産業廃棄物を保管しているドラム缶を屋外で保管・管理する場合は、経年劣化によって破損や腐敗の恐れがあります。
そのため、使用前はドラム缶に破損や劣化がないか確認して、爆発を防ぐために、産業廃棄物を保管するドラム缶を置く周辺環境の温度もこまめに把握するようにします。
まとめ
産業廃棄物の保管施設には法律で基準が定められているので、基準を満たす必要があります。
また、産業廃棄物の種類や性質ごとに適切な保管方法を選ぶ必要があります。
ご紹介したようにフレコンバッグやコンテナ・ドラム缶を活用し、産業廃棄物を適切に保管するようにしましょう。