廃油は、さまざまな事業活動に伴って排出され、なかには〝危険物〟として特別管理産業廃棄物に該当する場合もあります。

廃油の種類にもよりますが、リサイクル率が高いものもあるため、最近では有価物として処理が出来るものもあります。産業廃棄物として処分を委託する際はマニフェストの発行が必要です。

廃油を扱う排出事業者の方は、正しい知識を身につけておくことが重要です。

そこで今回は、廃油について以下のことがわかる内容になっております。

  • 産業廃棄物の廃油とは?特別管理廃棄物になる廃油も具体例を紹介
  • 廃油を処理する3つの方法
  • 廃油を買取してもらうときはマニフェストが不要なのは本当?
  • 廃油の処理にはあらゆるパターンに対応できる電子マニフェストがおすすすめ

産業廃棄物の廃油とは?具体例を紹介

  • 鉱物性油…潤滑油、エンジンオイル、重油等
  • 動植物性油…サラダ油、ラード、天ぷら油等
  • 溶解剤…アルコール類、洗浄油、石油等
  • 固形油…アスファルト、クレヨン、固形石けん等
  • タールピッチ
  • インクかす
  • 油紙かす

上記で紹介した廃油の他に、類似する産業廃棄物として「含油汚泥」や「油泥」などがあります。
これらの産業廃棄物を処理する場合は、廃油と汚泥の処理ができる2つの許可を得た処理業者に委託する必要があるので注意しましょう。

廃油の主な保管方法は一斗缶やドラム缶に入れて保管する方法が適しています。

ドラム缶は廃油の他に、汚泥など水分を多く含む産業廃棄物や、発火の恐れがあるもの、腐食して蓄熱しやすいものの保管にも適しており、多くの産業廃棄物で使用されます。

注意点として、ドラム缶や一斗缶に廃油を入れて屋外に保管する場合は、長期間の使用による腐食に注意する必要があります。

この他には、低沸点の廃油をドラム缶・一斗缶に入れて保管する場合は、膨張したり、爆発したりする恐れがあるので周囲の温度環境にも配慮するようにしましょう。

特別管理産業廃棄物の廃油

  • 揮発性油類
  • 軽油類
  • 有機塩素化合物が含まれる廃油
  • PCB(ポリ塩化ビフェニル)が含まれる廃油

廃油のなかでも、引火点が70度未満の揮発性油類は、「引火性廃油」として扱います。
引火性廃油は燃えやすいという特性を持っているので、保管や運搬、処理のときには十分注意を払う必要があるため、通常の産業廃棄物ではなく〝特別管理産業廃棄物〟に分類されます。
さらに、特定の有機塩素化合物やPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む廃油も特別管理産業廃棄物として定められており、保管や運搬、処理には消防法や廃掃法によって厳しく規制されています。

引火性廃油の場合、消防法では指定数量が係わってくるので、保管内容が通常の廃油よりも厳しいため以下を確認しておきましょう。

第4類(引火性液体)

1特殊引火物50ℓ
2第一石油類非水溶性液体200ℓ
水溶性液体400ℓ
3アルコール類400ℓ
4第二石油類非水溶性液体1,000ℓ
水溶性液体2,000ℓ
5第三石油類非水溶性液体2,000ℓ
水溶性液体4,000ℓ
6第四石油類6,000ℓ
7第五石油類10,000ℓ

【参照】消防法危険物および指定数量|東京工業大学

第4類(引火性液体)とは、厚生労働省の資料によると「液体であって引火性を有する。」と定められています。主にガソリン、灯油、軽油、重油、アセトン、メタノールが該当し、上記の表で紹介した指定数量の他に、保管場所においても規定があります。

「こんなにたくさんの廃油を保管しない」という場合でも、指定数量未満の場合は市区町村の条例を守る必要があります。

そのため、廃油の保管場所がある自治体の条例を確認しておきましょう。

産業廃棄物の廃油はどのように処理されるのか

産業廃棄物の廃油は、最終処分と呼ばれる焼却処分と埋立処分の他に、リサイクルすることも可能です。
ここからは、廃油がどのようにして処理されるのか3つの処理方法を紹介していきます。

1.焼却処分

廃油の最終的な処分方法は後述する埋め立て処分ですが、その前段階に必ず焼却する必要があります。

その理由は、焼却処理を行うことで油分を含む浸出液によって環境が汚染されるのを防ぐためです。

発熱量が高い廃油を焼却処理する場合はロータリーキルンや固定床炉を用い処理を行い、発熱量が低い廃油を処理するときは流動床炉が使用されます。

2. 埋立処分

焼却処分を完了した廃油は、廃棄物処理法の処理基準に則って最終処分場で埋め立て処理されます。

最終処理される廃油は令和4年度では1.5%で、ほとんどが減量化やリサイクルが行われます。

3.リサイクル

廃油は産業廃棄物のなかでもリサイクル率が高い廃棄物で、令和4年度では44.2%の廃油がリサイクルされています。

また、54.3%の廃油が「減量化」と呼ばれる徹底した分別や、設計・発注の段階で減量歩留まり率を高めることが可能になっています。

リサイクルされた廃油は、以下のように再び新しいものへと生まれ変わります。

  • 再生潤滑油
  • 石けん原料
  • ろうろく原料

長期間の使用によって劣化した廃油は、廃油再生事業者によって「再生潤滑油」としてリサイクルされます。

しかし再生潤滑油にできるのは動植物性廃油や、ギアー油、タービン油などの一部の工業用潤滑油のみです。

絶縁油や自動車エンジン油、防錆油などは再生潤滑油には向いません。

また、再生潤滑油となった廃油の一部は、ビニールハウスの暖房用燃料や、公衆浴場などの燃料としても使用されます。

次に、廃油は石けんの原料としてもリサイクル可能です。

廃油に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を加えて火水分解を起こし、石けんの原料となる脂肪酸のナトリウム塩を生成することができます。
意外かもしれませんが、廃油石けんはとてもエコで肌や環境に優しいため、台所やトイレ、お風呂など私たちの暮らしに欠かせない存在になっています。

最後に廃油はろうそくの原料としてもリサイクルされています。

廃油と廃油凝固剤を混合させることで、ろうそくの原料にすることが可能です。
【参照】令和4年度 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値|環境省

廃油を有価物として扱う場合はマニフェストが必要な理由

前述したように、廃油はリサイクル率が高いため最近では専門業者による買取も盛んに行われています。

インターネットで調べてみると、「廃油は有価物になるから〝専ら物〟として扱える」と紹介する記事も多く、「専ら4品目に廃油が加わったのかな?」と感じた方も多いのではないでしょうか。

ここからは、廃油を有価物として扱う際の注意点を交えながら、廃油をリサイクルする際の正しい扱い方について解説していきます。

廃油は「到着時有価物」として扱うことが可能

廃油のなかでも特に廃食用油は廃棄物か有価物か長く議論されてきており、平成17年3月25日に環境省が発した通知によって、廃油を「到着時有価物」として扱うことが可能になりました。

到着時有価物とは、排出事業者が廃油をリサイクルする目的で、有償で譲り受ける買取業者へ引き渡す場合に、引き渡し側が輸送費を負担し、輸送費が売却代金を上回る場合に、引き渡しまでは産業廃棄物として扱い、引き渡し後は有価物として扱う方法です。

到着時有価物については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

参照: 到着時有価物とは?注意点や産業廃棄物マニフェストの作成方法を解説!

廃油は「専ら4品目」に該当しない

ここで間違えやすいのが廃油を専ら物として扱い、マニフェストの発行なしで取引してしまう事例です。

実際に買取業者から「マニフェストは不要です」と言われるケースも多いですが、専ら物とは以下のように廃棄物の処理及び清掃に関する法律では定めています。

1. 古紙
2. くず鉄
3. 空きびん類
4. 古繊維

【参照】廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について|環境省

上記4品目は「専ら4品目」と呼ばれており、廃棄物処理法上の許可は不要と定められているため、契約書は必要ですが、マニフェストの発行は不要です。

廃油は専ら4品目ではないので、廃油をリサイクル目的で取り扱う業者であっても産業廃棄物処理業の許可やマニフェストが必要ですが、商品取引とし売買する際は資源物売買契約書が必要となりこの場合においてはマニフェストは必要ありません。

インターネット上で「廃油 マニフェスト」などで調べていると、「廃油をリサイクル処理する場合、マニフェスト不要」「廃油をリサイクル目的で回収する場合は許可不要」と紹介されているケースが多いですが、勘違いしないよう注意が必要です。

廃油の処理でマニフェストが不要になるケースがある

廃油の買取でマニフェストが必要か不要かについてお話しましたが、処理に関してマニフェストが不要になるケースがあります。

海洋汚染防止法の規定により許可を受けて廃油処理事業を行う者に外国船舶から発生した廃油の処理を委託する場合
【参照】利用対象|JWNET
施行規則 第8条の19で、排出事業者が自ら処理する場合に例外的にマニフェストが不要になるケースがあります。

全部で8つのケースを定めており、8つ目に上記記載の廃油を処理する場合の特殊ケースを定めているので、該当するか確認してみましょう。
【参照】よくある質問 基本編|東京都環境局
【参照】「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて(通知)」に関する報道について|環境省

電子マニフェストであらゆる廃油処理もスムーズになる

廃油に限らず、産業廃棄物を処理するときはマニフェストの発行が必要ですが、マニフェストには紙と電子の2種類あります。

最近では電子マニフェストを導入する排出事業者や収集運搬業者、処理業者が増えています。

電子マニフェストにはさまざまなメリットがあり、ご紹介したような廃油を有価物として扱う場合や、廃棄物として処理する場合などあらゆるパターンにも対応可能です。

ここからは電子マニフェスト導入のメリット・デメリットと、廃棄物総合管理システム〝Wing〟の特徴を紹介していきます。

電子マニフェスト導入のメリット・デメリット

メリットデメリット
事務処理の効率化
法令の遵守
データの透明性
産業廃棄物管理票交付等状況報告書が不要 など
インターネット環境が必須
サーバーダウンの可能性
導入費用がかかる など

【参照】電子マニフェストガイドブック|公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)

費用やインターネット環境が必要ですが、電子マニフェストを導入することで上記のようなメリットを得ることができます。

大きなメリットとして、産業廃棄物管理票交付等報告書が不要になることではないでしょうか。

紙のマニフェストを発行している場合、産業廃棄物管理票交付等報告書を毎年度各自治体に提出する必要があります。

しかし電子マニフェストでマニフェストを発行することで、マニフェスト情報はJWセンターが排出事業者に代わって都道府県知事などに報告してくれるためです。(廃棄物処理法第12条の5第9項により規定)

他にも、紙のマニフェストを保管しておく場所が不要になり、紛失リスクもなくなるので管理がとてもラクになります。


廃棄物総合管理システム〝Wing〟の特徴
〝Wing〟は、マツダ株式会社が開発した廃棄物管理業務支援nための総合管理システムです。

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まとめ

産業廃棄物の廃油は、通常の産業廃棄物として扱えるものと、特別管理産業廃棄物として扱わなければならないものの2つに分けられます。

特別管理産業廃棄物の廃油の場合は、特別な保管基準が定められている他に、消防法や自治体の条例も確認しておく必要があります。

また廃油はリサイクル率が高い産業廃棄物の種類でもあるので、最近では買取が盛んに行われています。

しかし廃油は法律で定める「専ら4品目」ではないので、許可を得た業者に買取や処理を委託する必要があるので、マニフェストの発行が必須です。

マニフェスト発行を効率化するには、電子マニフェストの導入がおすすめ。

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