産業廃棄物を排出するときに、事業主はマニフェストを交付して適切に処理されたのか把握・管理することができます。
しかしそれだけでは自治体にまで報告できていないので、1年に1度「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」を提出して報告しなければなりません。
そこでここからは、産業廃棄物管理票交付等状況報告書とは?提出期限や提出場所・提出方法について解説していきます。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書はどんな書類なの?
産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付等状況報告書とは、産業廃棄物管理票の交付状況などを自治体に報告するために提出する書類のことです。
マニフェストは、産業廃棄物の運搬や処理を別の業者に委託する際に交付する書類で、産業廃棄物管理票交付等状況報告書によって、自治体は産業廃棄物の排出事業者が適正に処理を管理しているかを把握できます。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書はマニフェストを交付した、産業廃棄物の事業主が提出する必要があります。
1枚しかマニフェストを交付しなかった場合でも、産業廃棄物管理票交付等状況報告書を作成して提出義務があります。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書の提出期限と提出場所
産業廃棄物管理票交付等状況報告書は、毎年6月30日までに自治体に提出します。
対象となるマニフェストは、前年の4月1日から3月31日までのものとなります。
この〝自治体に提出〟とは、産業廃棄物を排出した事業場を管轄する自治体である必要があります。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書は自治体によって提出窓口が異なるので、事前にどこに提出すればいいのか自治体のホームページなどで確認しておくと安心です。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書の提出方法
自治体によっては、窓口での提出はもちろん、郵送での提出にも対応している場合があります。
窓口で提出すれば、直接書類をチェックしてもらえるので、万が一記入ミスなどがあればその場で指摘することができることから修正がスムーズです。
郵送での提出の場合、自治体への郵送する都合から自治体が産業廃棄物管理票交付等状況報告書を確認するまで時間がかかり、且つ修正が発生した場合は再度郵送でやりとりする必要があるので少々面倒です。
そのため、時間が許すのであれば直接窓口に産業廃棄物管理票交付等状況報告書を提出しに行ったほうがいいでしょう。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書の書き方は?記入例を紹介
産業廃棄物管理票交付等状況報告書には、以下の5つの項目を明記していきます。
- 報告日
- 報告者の住所、氏名、電話番号
- 事業場の名称、業種(日本産業分類の中分類)、所在地、電話番号
- 産業廃棄物の種類および委託先ごとに記入するものとして、排出量(t)、管理票の交付枚数
- 運搬受託者・処分受託者の許可番号、氏名または名称、運搬先・処分場の住所
産業廃棄物管理票交付等状況報告書の書式は、廃棄物処理法施行規則の様式第3号で定められており、環境省のHPから確認できます。
ここからは、上記5つの項目について順を追って書き方を紹介していきます。
1.報告日
産業廃棄物管理票交付等状況報告書を作成した日、もしくは提出日を記入します。
2.報告者の住所、氏名、電話番号
産業廃棄物管理票交付等状況報告書は、産業廃棄物を排出する事業主が作成し提出する書類なので、事業主の氏名、電話番号、住所を記載します。
ここで注意したいのが、産業廃棄物管理票交付等状況報告書は〝排出事業場ごとに作成する書類〟なので、例えば同じ県内に2つ、3つと事業場がある場合は、それぞれ別に産業廃棄物管理票交付等状況報告書の作成が必要です。
しかし建設業など〝排出場所が短期間に転々と移動する〟場合は、いくつかの事業所分をまとめて「1事業所」として産業廃棄物管理票交付等状況報告書の提出が認められています。
3.事業場の名称、業種、所在地、電話番号
事業場の名称や業種、所在地、電話番号を記入します。
前述したような〝排出場所が短期間に移動する〟場合は本社の名称や業種、所在地、電話番号を記入しておくと自然です。
4.産業廃棄物の種類、および排出量(t)、管理票の交付枚数
産業廃棄物管理票交付等状況報告書は原則として、産業廃棄物の種類と処理委託先ごとに作成するように求めていますが、中には難しいケースもあります。
マニフェストは、産業廃棄物を処理する度に運送会社や処理会社、産業廃棄物の種類ごとに交付する膨大な量の書類なので、これを1枚の書類にまとめて産業廃棄物管理票交付等状況報告書を作成する必要があります。
- B社…廃プラスチックと汚泥を収集運搬
- C社・D社…廃プラスチックと汚泥の中間処理
- E社・F社…金属くず・がれき類の収集運搬
- G社…金属・かれき類の中間処理
例えばA事業所が、上記のように産業廃棄物の種類に応じて、おつきあいのある処理会社に委託して処理を行った場合、複数の〝記載項欄〟が必要になります。
ほとんどの会社では、シンプルにマニフェストを単票保管するだけでは産業廃棄物管理票交付等状況報告書を作成するのは不可能です。
そのため、エクセルを活用してマニフェストを管理している事業者の方が多いのでおすすめです。
次に、〝産業廃棄物の種類〟では、原則法令で使用されている20種類の産業廃棄物を記入しますが、なかには産業廃棄物の発生時から分別できない一体不可分のものもあります。
自治体によっては「廃プラスチック類と金属の混合」と記載しても問題ないとしているケースもあるので、産業廃棄物管理票交付等状況報告書を作成する前に確認しておくと安心です。
最後に、排出量をトン(t)で表記しなければなりませんが、マニフェストで認められていた「ドラム缶1本」や「4tダンプ一台分」というような表記が産業廃棄物管理票交付等状況報告書では認められません。
自治体によっては〝体積・重量換算表〟を示してくれているところもありますが、産業廃棄物はその性質によって体積や重量が大きく変動します。
水に濡れた木材は膨張し、重みを増すので当然体積や重量が変わってくるのは想像に容易ですね。
そのため、あらかじめ自社が排出する産業廃棄物の重量や体積については把握しておくようにしましょう。
5.運搬受託者、もしくは処分受託者の許可番号、氏名または名称、運搬先、処分場の住所
産業廃棄物の収集運搬や処理を委託した会社の情報を記載します。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書の提出しないことの罰則
産業廃棄物管理票交付等状況報告書は、1年に1度自治体へ提出することが義務づけられています。
しかし、もし提出しなければどうなるのでしょうか?
実際の法令に記載された罰則や事例について解説していきます。
関連する廃棄物処理法の条文では、以下のように定められています。
(産業廃棄物管理票)
法律 第十二条の三
7 管理票交付者は、環境省令で定めるところにより、当該管理票に関する報告書を作成し、これを都道府県知事に提出しなければならない。
(管理票交付者の報告)
省令 第八条の二十七 法第十二条の三第七項の規定による管理票に関する報告書は、産業廃棄物を排出する事業場(中略)ごとに、毎年六月三十日までに、その年の三月三十一日以前の一年間において交付した管理票の交付等の状況に関し、洋式第三号により作成し、当該事業場の所在地を管轄する都道府県知事に提出するものとする。
(勧告及び命令)
法律 第十二条の六
都道府県知事は、第十二条の三第一項に規定する事業者、運搬受託者又は所分受託者(以下この条において「事業者等」という。)が第十二条の三第一項から第十項まで、第十二条の四第二項から第四項まで又は前条第一項から第三項まで、第五項、第六項及び第十項の規定を遵守していないと認めるときは、これらの者に対し、産業廃棄物の適正な処理に関し必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する勧告を受けた事業者等がその勧告に従わなかつたときは、その旨を公表することができる。3 都道府県知事は、第一項に規定する勧告を受けた事業者等が、前項の規定によりその勧告に従わなかつた旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつたときは、当該事業者等に対し、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
行政はひとつひとつの処理を確認し、「あやしい…」と感じた産業廃棄物管理票交付等状況報告書は徹底的にチェックを行います。
実際にあった事例では、最初にT県に産業廃棄物管理票交付等状況報告書が提出されたが、管轄が違ったためU市に返送→U市が報告書を確認したところ、記載されていた処理会社がU市の許可を有しておらず、調査の結果偽装許可証だったことがありました。
こうした産業廃棄物管理票交付等状況報告書の内容をきっかけに、排出事業者の責任が問われることもあります。
こうした問題に限らず、不法投棄があれば税金を使って原状回復を行うため、徹底的にマニフェストや産業廃棄物管理票交付等状況報告書がチェックされます。
一見すると産業廃棄物管理票交付等状況報告書を提出するデメリットが大きいように感じますが、提出しなければ法律で勧告や公表、命令の対象にできるとなっているので、提出は忘れずに行った方がいいでしょう。
電子マニフェストなら産業廃棄物管理票交付等状況報告書が不要に
先に結論を言うと、何かと作成が面倒な産業廃棄物管理票交付等状況報告書は、電子マニフェストで交付していれば提出不要です。
電子マニフェスト制度では、これまで紙で扱ってきたマニフェストの代わりに、公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センターが運営する情報処理センターを活用してマニフェストを交付できます。
情報処理センターが代わりに産業廃棄物管理票交付等の状況報告を行ってくれるので、電子マニフェストを導入することで提出が不要になります。
他にも電子マニフェストを活用するメリットはたくさんあるので、ここから詳しく解説していきます!
電子マニフェストのメリット
- 産業廃棄物管理票交付等状況報告書の提出が不要になる
- 情報システムが登録項目を確認してくれるので記入漏れを防げる
- 頻繁に利用する情報はシステムが記録してくれるので、入力の手間がかからない
- 紙のマニフェストのように保管場所が不要
- 紙のマニフェストのように紛失リスクゼロ など
電子マニフェストを導入する企業は増えており、最近では電子マニフェストシステムをより便利に快適に使うことができる総合パッケージも各社でリリースされています。
電子マニフェストのデメリット
- 排出事業者だけではなく、収集運搬業者や処分業者の3者が電子マニフェストの導入が必要
- インターネット回線の不具合で利用できなくなるリスクがある
- システムダウンが起こることがある
- 導入コストがかかる
- 廃棄ルートの設定が面倒
- 産業廃棄物排出の度に受渡確認票の発行が必要になり、回収が終わった後に登録作業が発生する。
「電子マニフェストを導入しようかな?」と検討されている方が最も気になるのが料金についてではないでしょうか。
電子マニフェストシステムの排出事業者向け料金はA、B、C区分で基本料と使用料が以下のように異なります。
- A区分…基本料(1年間)26,400円+使用料(登録1件あたり)11円
- B区分…基本料(1年間)1,980円+使用量(登録91件目から)22円
- C区分…基本料(令和4年4月〜/1年間)110円+使用量(登録6件目から)22円
収集運搬業者の場合は、基本料は1年間で13,200円です。
電子マニフェストシステムは、処分終了報告のみの場合は収集運搬業者の基本料のみで利用できますが、2次マニフェスト登録機能を付けるとA区分とB区分のいずれかになります。
C区分は排出事業者が20社以上集まり、1社が代表者となって加入する料金で、加入にはいくつか条件が設けられています。
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まとめ
産業廃棄物管理票交付等状況報告所は、毎年6月30日までに事業主が各自治体へ提出する義務がある書類のことです。
前年4月1日〜3月31日までのマニフェストをまとめ、必要事項を記入していきます。
書き方や記入例についてご紹介しましたが、電子マニフェストを導入すると産業廃棄物管理票交付等状況報告書の提出は不要です。
電子マニフェストは事業主だけではなく、収集運搬会社や処理会社も導入しなければ利用できませんが、利用することでさまざまなメリットがあります。
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